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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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水冷方式

水冷方式

【水冷方式・本文抜粋】

 「森本俊樹さん。お年は二十七歳ですね」

 と彼女は言った。僕は『そうです』と答えた。そしてこの病院のプラスチック製の診察券を作ってくれた。それと一階の内科の5番と看板が掛けてあるドアの前で待って下さい、と言われたのでその通りにした。

 僕が呼ばれるまで二十分程時間があった。今は午後二時十分だ。もう予約を入れて待っている人は殆ど居ない。

 『森本さーん。森本俊樹さーん。5番にどうぞ』

 とアナウンスがあったので5番のスライド式の重い扉を開けた。

 「失礼します」

 と僕は言った。白衣を着た四十歳ぐらいの医者がコンピューター画面を見ている。どうやら僕のカルテが表示されているらしい。

 「どうぞ、座って」

 と医者に言われたのでキャスターの付いた丸椅子に腰掛けた。

 「熱があるけど自分では分からない?」

 「はいそうです」

 医者は僕の額に手を当てた。

 「わあ。あるね。かなりあるね。ちょっとこれで体温測ってみて」

 と電子体温計を出されたので左の脇に挟んだ。その時、色っぽい女性の看護士がやって来て『血圧、測りますね』と言って僕の右腕のシャツの袖をめくって、台に乗せてシュシュとポンプで空気を送り、血圧を測った。

 「上が百二十、下が八十。正常ですよ」

 と看護士が言った。化粧品の匂いがした。僕は軽く頷いた。

 ピピ、ピピ、と電子体温計が鳴った。それを医者に渡す。

 「なんだこの数値は…」

 医者は非常に驚いた顔で言った。

 「どうしたんですか?」

 「き、君の体温は四十五℃もある」

 「はあ」

 「普通は三十六℃ぐらいだ。異常だ」

 「はあ」

 「もう一度測ってくれ」

 「はい」

 結果は同じ四十五℃だった。医者は僕の気分や汗をかいてないか調べたが、熱以外は全て正常だった。

 「なんなんだ、これは…」

 と医者は頭を抱えた。面白そうだったので僕も頭を抱えてみた。特に面白くない。

 「どうしよう…。集中治療室に入れるか」

 「僕は仕事がありますので」

 「そんな事言ってる場合か!」

 「でも気分はいいです」

 「妙だな…。四十五℃も熱があったら脳細胞が死滅してこんな会話も出来ない筈だ」

 「へえー」

 「あり得ない」

 「はあ」

 「あり得ない」

 「そうなんですか」

 「どう考えればいい?」

 「さあ?」

 「異常だ、異常だ、異常だ」

 医者は頭を抱えて机を叩き始めた。恐くなったので僕はそーっと診察室を出た。そして病院を出た。

 アパートに戻る。自室は家賃が六万円の1LDKだ。寝室兼仕事部屋でアメリカのベストセラー作家、キングス・ベリーの『金星冒険』と言うSFシリーズ物の小説の翻訳に取りかかなければならない。

 原文は、アメリカの出版社からタイプ打ちの原稿のコピーを直接郵送して貰っている。結構な分量があるので毎日九時間はやらないと一ヶ月で終わらない。もっと僕の翻訳能力が高ければいいのだが、頭はそう良い方でもないので仕方が無い。こつこつと翻訳して四百字詰め原稿用紙に鉛筆で書くだけだ。ただ几帳面なのが取り柄だと自分では思っている。だから山路先生は僕に原稿の翻訳初稿を任せてくれているのだろう。

 『金星冒険』シリーズはキングス・ベリーの現在の代表作で年に六冊は出版されている。中身は金星人のお姫様をさらった極悪宇宙人を主人公のキャプテン・ シェーン・カーターが相棒のロボット、ベンザムと大活躍して助け出す、と言うような内容だ。僕は亡くなった母が買ってくれた勉強机に向かって新しい原稿と向き合い、四百字詰め原稿用紙を用意し、鉛筆を彫刻刀で削って仕事に取り掛かった。


水冷方式

生きるとは何か? 生きぬ抜くとはどういう事か? 

その一つの答がここにある。

シュールレアリズム傑作SF『水冷方式』 さあ、今日も頑張ろう! 


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