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Nobuyuki Takezawa

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殺人者保護法

殺人者保護法

殺人者保護法・本文抜粋】

 「なんですか、これ…?」

 と及川が呟いた。場所は郊外に作られた殺人者用の『訓練所』だ。地上は古い旅館を改装して使っているが、地下には巨大な迷路の様な空間がある。通路の両側には不規則に鉄の扉がある。出入り口は一つしかないから警察官の歩哨は居ない。

 まだどんな殺人者に、どのような内容の訓練を施すのか突き詰められていないので、各担当者が適切と思われる訓練をする為に部屋の大きさや設備が異なっているのだ。

 俺と及川は広めの部屋の中央に置かれたテーブルの上にあるモノを見ていた。及川が呟いたのも分かる。LEDのシーリングライトが照らしているのは黒いロープと黒いナイフだ。その隣には俺の鞄がある。

 「殺人者の自覚の無い者が殺人を覚えて公務をこなす為の物、だ」

 と俺は言った。壁の何処かに監視カメラとマイクが埋め込まれていて、地上の旅館の部屋で記録されているはずだ。誰かがリアルタイムで見ているかも知れない。

 「公務?」

 及川はナイフを持って言った。殺人者用の特殊ナイフで、刃渡りは32センチ。チタンとタングステンとセラミックで出来ていて、刃は分厚い。持ち手の部分には皮バンドがあり、ナイフを握った手を固定出来るようになっている。

 「そうだ。これから君は公務として殺人を行ってもらう。意味が分かるか?」

 「国が認可している、って事ですか?」

 「死刑も国が認可している殺人だろ? 戦時の敵兵の殺害も。そんなもんだ」

 俺は部屋の壁密着して置いてあるロッカーから、ビニール詰めにされている服を取って来て、テーブルに置いた。及川からナイフを借りて、ビニールを裂く。凄く良く切れるナイフで少し驚いた。

 「この服が君の作業着だ」

 俺はまず及川専用の作業着をテーブルの上に広げた。黒地に赤いラインが入ったツナギだ。下着の上下と靴下もある。全部黒色だ。小さなチタンの輪っかを繋げて作られた手袋もある。戦国武将が着用していた鎖帷子の手袋版だ。俺の要望はほぼ上に通ったようだ。

 「色が黒ばっかりなのは、普段着だと返り血で真っ赤になるからだ。手袋はナイフで自分の指を切り落とさないように作られている」

 「はあ」

 「では、とっとと着替えてくれ」

 「あ、はい」

 及川はいつものジーンズでまとめた服を脱ぎ、少し恥ずかしそうにして下着も取った。そして黒い下着を身に付け、ツナギを着た。なかなか良く似合っている。

 「そのツナギもある程度防刃機能がある」

 俺は及川のツナギの捩れを直して言った。襟は首に密着するようになっているし、心臓にあたる部分も布が厚い。それから鞄からナイフとロープを収納する大きなポーチを取り出した。ポーチにナイフとロープを入れ、ツナギの腰にある金具に留めさせる。それからまた鞄の中からスマホを取りだして及川に手渡した。

 「電話、は出来ないスマホですか」

 及川は電源を入れて言った。画面には色分けされた四つの色違いの四角い図形しか無い。

 「察しが良いね。通話先は俺と、局の管轄官だけだ。俺が青、殺人者保護局の一般課の特別回線が黄色だ。俺に何かあったら局に連絡しろ。何も無いと思うけどな。銀色が着信受領。普通に音が鳴るからタッチしてくれ。そのスマホからタッチすると俺との直通になる。こちらから簡単な命令も出せる。『突っ込め』『戻れ』『規定数に達した』とかいろいろと表示出来る。ハンドライトの機能もある。話がある時は遠慮せずにな。で、赤色は担当区域の立体マップだ。この区域の中でしか殺人を行ってはならない。理由は、隣接する区域に殺人者が居る場合があるからだ」

 俺は服の入っていたビニールの中に、野球帽のような帽子があったので及川に被せた。

 「『殺人者同士の殺人は、通常の殺人と見做す』ですか?」

 「そうだ。殺人者が殺人者を殺すと、結局二人とも失う事になる。とんでもないコストの無駄遣いだ。さて、本日の仕事の内容を伝える。16時から18時の間に二人殺す事。方法はロープとナイフ。担当地区はスマホで確認してくれ」

 「えっ! もう人を殺すんですか!」

 「何の為に何日も掛けて説明したと思ってんだ」

 「いや、でも、その、まだ心の準備が」

 「必要無い。殺人者は心の準備などしない。殺せば分かる」

 「拒否、したら…?」

 「ふーむ、ここまで人間っぽいと遺伝子検査を確認したくなるなあ。でも握力数値は手加減して187だった。覚えてるぞ。それに君の反応は未覚醒殺人者に共通の反応だ」

 「は、はあ」

 「もし従わないなら、今すぐ殺処分にする。ここの床がコンクリート製で、部屋の中央に排水溝がある理由が分かるか?」

 「あ! ありますねえ…」

 「向こう側の壁に白くて小さなドアがあるけど、中は消火ホースが収まっている。ここって燃える物が殆ど無いけど、取り敢えずスプリンクラーはある。消火ホースの使い方は分かるな?」

 「はい…」

 「俺には君を脅す理由が無い。マニュアル通りにプログラムを進めるだけだ」

 俺はホルスターに収まっている毒弾入りの自動拳銃を取り出した。また未覚醒の奴を一から教育するのかと思うとうんざりする。

 「分かりました、稲垣さん」

 「そうかあ?」

 「本当ですって!」

 「分かった。では行こう」

 俺は拳銃を仕舞った。そして鞄の中から金属の輪のような装置を取り出して及川の右の足首に填めた。

 「GPSだ。電子ロックだが、足首を落とさないと外せないぞ。仕事が終わったら外して寮に帰還だ」

 俺はまた及川に手錠をして、鉄の出入り口付近にある指紋認証式のボタンを押した。重々しい鉄の扉が開く。こんなに厳重にする意味など無いのだが、保護局内でも殺人者を『人間の人殺し』と同じだと思っているのが多いので無駄な事をする。困ったもんだ。



殺人者保護法

『増えすぎた人口を調整する為に、群体としての人類が産み出したのが殺人者である』というのが本書の基本設定だ。

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