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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

当ブログでは、私の発行済みの電子書籍を紹介をしております。また、楽しんで頂けるようエンターテインメントブログを目指しています。ごゆっくりお楽しみ下さい。

※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

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赤い服の女 【3】


【3】

 八尾プロレスの万博公園興行には間に合わなかった。替わりに先輩のプロレス番記者に取材をして貰った。先輩は訝しがったけど『赤い服の女の有力な手懸かりが見つかった』と報告したら引き受けてくれた。先輩が試合後に会社に送った原稿と写真を編集に頼んで送って貰ったら、大体想像通りの試合展開だった。

 若手の有望株の紹介、中堅どころの空中戦、そしてメインのタッグは、藤本選手と須賀対河内極悪連合の中尾と永井選手だ。ど派手な照明を浴びて、中尾は赤いワンピースを着て登場。観客は大いに沸く。中尾は『怖いか! 須賀! さらっちゃうぞー!』とマイクで叫び、ヒラヒラと踊ってみせた。須賀は、怖じ気づく素振りを見せ、中尾と永井選手の二人掛かりの攻撃でダメージを受ける。そこに藤本選手が救援に入り、中尾と永井選手をドロップキックで場外に出す。そして須賀に平手打ち。須賀は驚き、そして落ち着きを取り戻す。須賀は中尾の赤いワンピースを破り、その切れ端で中尾の首を締め付ける。そこで藤本選手に交代。中尾を様々なワザで追い込む。中尾が永井選手にタッチ。藤本選手も須賀にタッチ。須賀は立ち関節ワザから派手な変化系のDDTを何度も放ち、最後はフルネルソン・スープレックスからの後方ジャンプ式回転ニードロップで永井選手から3カウントフォールを奪った。その直後に中尾の歯ブラシ攻撃で流血させられてしまったが。

 最後は中尾の『お前らー! 今夜も歯を磨いて寝ろよ!』のマイクパフォーマンスで締めくくられた。普段なら八尾プロレスを取り上げないスポーツ新聞やテレビ局の取材陣も来ていて、お客さんも大盛り上がりだったそうだ。もしかしたらこの試合がマイナー団体からメジャー団体への昇格の転機となるかも知れない。

 「ちくしょう…。観たかったな…」

 俺は吉川寿々子さんの屋敷の前に立ち、呟いた。折角いい記事が書けるはずだったのに、先輩に任せてしまった。でも、それは仕方ない。俺にはやるべき事があったのだ。

 それにしても八尾プロレスの商魂と言うか、臨機応変さには感服する。当分中尾は赤いワンピースを着て登場するのだろう。普段のトレーニングと演技練習のたまものである。

 遠くからパトカーのサイレン音が聞こえて来た。記者になったらこんな場面も多いんだろうな、と予想していたけど二日続けて警察と関わるとは思ってなかった。


 
 八尾プロレスの定休日は月曜日と金曜日である。定休日と言っても会場を押さえている場合は当然興行を行う。が、プロレスラーは過酷なパフォーマーなので、肉体のメンテナンスは必須だ。土日は屋内会場での連戦となるので、月曜日は徹底して怪我の手当や休養や、トレーナーでもある井筒氏による整体治療が行われる。また、神戸の劇団で演技練習をしに行くのも月曜だ。

 金曜日は梶本氏による演出練習の日だ。金曜は全ての試合の指導が行われる。メインを盛り上げる為に、前座は派手なワザを使う事なくお客さんを楽しませなければならない。そう言った流れや、細かい演出まで身体で覚えさせるのである。既にパターンが決まっている試合の場合は、ある程度の演出を受けた後は自由だ。

 その金曜日、俺は八尾市内のマンションの部屋の前で中尾と一緒に立っていた。インターホンを押しても部屋の主がなかなか出て来ないのである。

 「居ないって事はないやろなあ」

 とジーンズにジャケットを羽織った中尾が言った。

 「居ますよ。多分、慌てているんでしょ」

 と、いつもの背広を着た俺が言った。エントランス式のマンションだったら居留守を使われていたかも知れない。ちなみに、部屋の表札は『須賀五郎』となっている。

 『あっ、中尾さんと加西さん、す、すみません、今、手が離せないもので』

 とインターホンから須賀の声が聞こえた。

 「事情は把握しているから。取り敢えず入れて欲しい」

 と俺。須賀の『は、はあ…。そうなんですか…』という声が聞こえた。

 そしてドアが開いた。俺と中尾は急いで中に入った。

 須賀は白いトレーナー姿だ。俺と中尾は靴を脱いでズカズカと部屋に上がってリビングに入った。

 「ちょ、ちょ、待って下さい!」

 と須賀。

 「寝室以外の部屋?」

 と俺。

 「何がですか?」

 「隠さなくてもいいですよ。ニュースは見ました?」

 「え? 何の?」

 「八尾で一人暮らしの女性の孤独死」

 「は?」

 「吉川寿々子さん」

 「はあ」

 「自分が第一発見者で、昨日は夜遅くまで警察で事情聴取を受けました。吉川寿々子さんの死因は脳溢血です。風呂に入って、居間でテレビを点けようとした時に脳の血管が破裂したらしいんです。推測の段階ですけど。で、意識を失ったまま亡くなられました。死後一週間以上経過してました」

 「はあ…」

 「今朝、警察から連絡があって、娘さんは4歳の時に病気で死んだ事になっています。吉川寿々子さんの旦那さん、つまり娘さんのお父さんはその一年後に交通事故でお亡くなりになりました」

 「…」

 「娘さんの名前は百合子、です。吉川百合子。それが彼女の名前です」

 「…ここに居るって、どうして分かったんですか?」

 「あの家で赤いワンピースを何着も置いてあった大きな部屋がありました。部屋の中の写真や、彼女の日記や、その他諸々の物品を昨日の内に自分のマンションに運びました。レンタカーで。だから赤い服の女の存在は証明出来ないと思います」

 「…こっちです」

 須賀はリビングの奥の部屋に俺と中尾を通した。

 「うおっ!」

 中尾が驚いて声を出した。その部屋は須賀が普段トレーニングに使っているようで、バーベルやダンベルや懸垂台が置いてある。それらの器具は部屋の片隅に移動させられており、部屋の真ん中に赤い服の女が体育座りをしていたのだ。

 体育座りをしている赤い服の女、吉川百合子は確かに大きい。が、立っている時と違ってそうするとコンパクトだ。と言っても、座高だけで160㎝はあるだろう。

 吉川百合子が顔を上げた。今まで眠っていたみたいだ。自分で長い髪をかき分ける。すると彼女の顔が見えた。

 大きな灰色の顔面の中に、真っ白で美しい顔があった。何だか、化け物が彼女を取り込んだようにも見える。

 「心配しなくていいよ。君をどうこうしようってわけじゃないから」

 と俺。

 「…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

 百合子はか細い声でそう言い、涙を流した。今日は長くなりそうだと俺は思った。



 「はーい、お肉の追加、持って来ましたよー」

 と小百合が言った。彼女はその巨体を体育座りのまま、少し身体を上げて、足首だけを動かして起用に歩く。音も殆ど立てない。両手でかざすように持った大皿には鶏肉が山盛りになっている。彼女は菜箸を器用に使って鶏肉を鍋の中に入れた。ちなみに、今は長い髪を後ろに束ねてポニーテールにしている。服は継ぎ当てした白いジャージだ。

 「どうもー」

 と須賀が言った。ここは急遽引っ越した須賀のマンションのリビングである。場所は信貴山に近い新築のマンションの三階の一室だ。

 「小百合さんは何をしても上手やねえ」

 と中尾が言った。もうすっかり百合子さんに慣れたようだ。ニコニコしている。

 須賀の元のマンションを訪ねてから一週間が経過している。その間に俺は人目に付かなくて防音性の高い壁と床を備えたマンションか、一戸建ての借家を探した。三日掛けてやっとこのマンションが適当だろうと判断した。その後、ワゴン車をレンタルし、俺の部屋に運び込んでいた百合子さんの私物や、百合子さん本人を真夜中に移動させた。百合子さんには申し訳なかったが、荷物のように屈んで貰って、シーツを被せて台車に乗せて運んだ。元の須賀のマンションには防犯カメラはなかったが、ここにはしっかり付いているので仕方の無い措置だった。

 俺達三人は、リビングのテーブルを囲んで水炊きパーティーをしている。何のパーティーかと強いてお題を挙げるなら『引っ越し祝い』だろう。

 吉川寿々子の直接の死因は窒息死だ。検死解剖の結果、やはり脳溢血を起こして、意識を失っている間に気道が塞がって呼吸が出来なくなったらしい。警察は俺から事情聴取と、あの屋敷の検分を行った。

 俺は『赤い服の女の情報を得る為に取材範囲を広げて、偶然鍵の掛かっていない家を見つけ、ドア付近で異臭がしたから中に入った。そして吉川寿々子さんの遺体を見つけた』と言い通した。二階には上がって無い事を示す為に、二階で触った物の自分の指紋は全てハンカチで拭き取っていた。警察では寿々子さんの死因も確定したし、俺の証言に何の矛盾も無いので取り調べは全て終了した。ただ、遺体発見時の事は記事にして関西スポーツに送った。翌日、『八尾で孤独死!』の見出しと共にまた一面記事になった。

 その後、顔見知りになった刑事さんに取材目的で吉川寿々子さんの履歴を訊いたわけだ。

 吉川寿々子さんは日記をつけていなかった。写真もあの大きな部屋にあったものだけだ。でも百合子さんから色々と話を聞いておおよその事は分かった。

 生まれた時は普通の女の子だったそうだ。しかし、何か食べさせると嘔吐するようになった。医者に診せても原因は不明。でも何も食べさせないと元気を取り戻す。でもまた食べさせる。嘔吐する。絶食させる。元気になる。繰り返しで4年が経過した。その間、水だけは飲んでいた。病気だと思っていたので幼稚園には通わせていない。

 その頃から百合子さんの身体に異変が現れ始めた。皮膚が灰色っぽくなり、頭部の骨格が大きくなり、急に身長が伸び始めたのだ。

 娘を不憫に思った寿々子さんは、百合子さんに赤いお洒落なワンピースを着せて夜中にあの公園で何度も遊んだそうだ。

 徐々に何かに変化して行く娘。病院に連れて行ったら多分見世物になると判断し、寿々子さんは生涯を通して娘を隠す決断をする。

 百合子さんが5歳になった頃、寿々子さんの旦那さんが交通事故で亡くなる。幸いな事に、あの屋敷は建設業を営んでいた旦那さんの父親のもので、その父親は既に亡くなり、遺産相続を済ませていた。遺産金も結構あったようだ。そして寿々子さんはあの隠し部屋を作り、百合子さんを世間から匿い、生活してきたのである。

 しかし、今から二週間程前に寿々子さんが死亡してしまう。どうすれば良いのか、小百合さんには分からない。百合子さんは寿々子さんとの想い出の場所、夜中にあの公園に赤いワンピースを着て行き、母親を偲んでいた。そこを目撃され、写真に撮られ、ジョギング中の須賀と出会ったのである。

 「それにしても似てるなあ」

 とテレビの横に飾ってある写真立てを見て言った。その写真には、寿々子さんに抱かれたまだ1歳の百合子さん、そして旦那さんが写っている。旦那さんは須賀にとても似ている。

 「その人の名前は史郎って言うんです。史郎の『し』は『ふみ』と書く方です」

 と俺。

 「史郎? 吉川史郎…」

 「須賀さんの家系って『~郎』って付ける習慣があるそうですね」

 「うん。親父が次郎、爺ちゃんが義一郎やったなあ。もう亡くなったけど」

 「須賀さんのお父さんの叔父さんの息子の四男の名前が史郎ですよ」

 「は? いや、いくらなんでもそんな事は…。あ、なんか昔、色々あったって聞いた事が…」

 「須賀さんのお父さんとその叔父さんが喧嘩して、叔父さんが家を出て、子供が多かったんで四男を養子に出して、出した先が吉川家」

 「マ、マジで!?」

 「警察で吉川家の家系をちょっと教えて貰ったのと、須賀さんのお父さんに直接訊いたのとを合わせたら、遠縁にあたる事が分かりました」

 「…絶句していい?」

 と須賀は困った顔で言った。俺は、須賀が結構素っ頓狂なところがあると知った。

 「運命とちゃうか?」

 と中尾。缶ビールを飲んで続ける。

 「さらわれて、気が付いて、顔を見合わせた時に、何か色々感じたって言うてたやん」

 「うん。悲しい気持ちとか、自分に対する暖かな気持ちとか…。今思ってもあれは不思議な体験でしたわ。いっぺんに、全部分かったような気がして…」

 と須賀。

 「せやからタクシー乗り場で気が付いたって、言うたんやろ?」

 「ええ。百合子さんが自分のマンションまで運んでくれて、最初はビビりましたけど、すぐに気分が落ち着いて、話を聞いて、それで匿う事にしたんです」

 「どう思う? 加西ちゃん。何がどうなってんの?」

 と中尾は俺に答を求めた。俺は百合子さんの身体を失礼の無いように調べさせて貰っていたので、自分の考えを述べる事にした。幸いに、百合子さんは台所で水炊き用の野菜を拵えているところだ。

 「あくまで推測ですけど…、推測ですよ、百合子さんは人類の進化形の一つの形だと思います」

 「進化形?」

 「まず、百合子さんは水以外の摂取を行うと嘔吐する。身体が食物を受け付けない」

 「水だけやったら死にますやん」

 「普通は。身体の中で水分を体組織に変換しているとしか考えられない」

 「はー…。どうやって?」

 「何らかの方法で分子、じゃなくて原子変換して別の物質に変換しているのかも…。もっと良く調べたら何か分かると思いますけど、百合子さんの命の保証は出来ませんし、世間の見世物になるかも知れません」

 「あかんなあ、それは」

 「次に水から作られた身体ですが、人間の規格から大きく外れています。でも骨格や筋肉の付き方は人間と同じ。身長は270㎝はある。手足も長い。力も強く、中尾さんのハイキックをまとも受け手も平気。皮膚はゴムみたいで強い弾力がある。体内の事は分からないけど、脈がありません」

 「死んでるやん!」

 「いや、百合子さんの手首の血管を触らせて貰ったら、反発を感じました。血流はあるんです」

 「どういう事?」

 「心臓による血流ではない何か別の仕組みがあると思います。そうでないと、あの巨体を支えるパワーの説明がつきません。普通の人間の心臓だったら立っただけで貧血を起こしますよ。それと、百合子さんは自分の意思で眠れるんです」

 「眠くなって寝るわけやないんか?」

 「ええ。何時間眠って、何時に起きて、って事が出来るんです。最長で10日間は眠っていられるとか」

 「冬眠出来るやん」

 「その通りです。10日間眠り、水分補給してまた10日眠る。この繰り返しで半年ぐらい過ごした事があるそうです。百合子さんの勉強は寿々子さんがみてたそうなんですが、読み書きと算数、料理やその他の家事について教えたところで長い睡眠、と言うか休眠状態になりました。理由は、万が一自分が他人の目に触れてはいけない、と百合子さん自身が判断しての事です」

 「そりゃ見つかりにくくてええわな。…で、百合子さんって結局なんなん?」

 と中尾が小声で言った。須賀も心配そうに俺を見ている。

 「人間ですよ。巨人症とかじゃ無いですね。百合子さんの精神性は他の生物を食べなくても良いところから来ていると思います。水だけでいいわけですから。つまり、生物の食物連鎖から外れた事になります。それと、須賀さんに言葉ではなく、イメージで自分の気持ちや状況を示しました。これはテレパシーのようなものだと思います。SF用語で言えば『先行新人類』でしょうか」

 「せんこう…、何?」

 と須賀が訊いた。

 「先行新人類、です。次の世代の人類の先駆け、ですね。百合子さんのような人だけになれば、人間同士が争う事も無くなります。水さえあればいいわけですし。それに身体は頑強、熊より強いかも知れません。耐久力もかなりあるものと思われます。氷河期が来ても地下で冬眠すればやり過ごせます」

 「なんか、凄いねんなあ、百合子さんは…」

 と中尾が呟いた。

 「はーい、お野菜出来ましたよー」

 百合子さんが野菜が山盛りになった大皿を掲げるようにしてリビングに入って来て言った。そして野菜を鍋に入れ始めた。

 …なんだろ、この気持ちは? 百合子さんの外見に慣れた時から気持ちが穏やかになっている。これはやはり百合子さんの影響なのだろうか。

 関西スポーツで都市伝説の記事を担当する事になった時からSFやオカルトの勉強をした。ある程度の知識が無いと記事は書けない。その知識で百合子さんの解説を試みたけど、本当のところは全くの謎である。

 実は髪の毛等も調べさせて貰っていた。あの部屋に、亡くなった寿々子さん以外の人の痕跡が一切無かったと警察で聞いていたので不思議に思っていたのだ。本来なら、百合子さんの髪の毛や皮膚片や指紋があって然るべきだ。そして百合子さんの髪の毛が『抜けない』と分かった。しかもハサミでも『切れない』。思いっ切り引っ張ったら痛がったので止めたけど、頭骨から直接生えている感じがした。皮膚には角質層が無く、指には指紋が無い。本当に生物なのか疑問に思った。

 テレパシーなんかあるはずはない。とも思っていた。が、実際に百合子さんの気持ちがある程度分かる。推測しての理解、ではなく実際に気持ちを感じるのだ。須賀と出会ったのも偶然ではないだろう。血縁が引き寄せた運命、いや、百合子さんの希望だったのかも知れない。それだけ彼女のテレパシーは強く広く人に影響するとしたら…。

 百合子さんが20数年間も発見されなかったのも、彼女がそう願ったからでは? だとしたら人の気持ちを操作出来る事になる…。

 もし、俺の仮説が正しいのならば、いずれ現生人類は終焉の時を迎え、百合子さんと同類の新人類が地球の支配者になるのだろう。…いや、現生人類は新人類の管理下に置かれるかも知れない。己の為に自然を破壊し、他の生命体を食す現生人類は下等種として…。

 「この水炊き、マジ美味いっすね」

 と須賀が嬉しそうに白菜を口に運んで言った。俺は頷いて、鶏肉をポン酢に浸して食べ、缶ビールを飲んだ。美味い。

 ふと、ある考えが浮かんだ。本当に美味いと感じているのか? 百合子さんの願いが美味しいと感じさせているのではないか?

 …俺はどうして百合子さんの保護に動いたのだろう? 須賀はどうしてジョギングのコースを変えたのか? 中尾はすっかり百合子さんに慣れて親しみを感じている。そして俺達は彼女を守ろうとしている。

 「あー、美味しい」

 と百合子さんがミネラルウォーターのボトルに口を付けて言った。そして微笑んだ。

 …あれ? 俺は何を考えていたんだっけ? ま、どうでもいいか。と思った俺は少し寒気を覚えた。


第二話『赤い部屋』に続く。
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