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Nobuyuki Takezawa

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【DD16】

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【DD16】 木場誠二 今村夏美 アラン・ギア 田中真治

 オーストラリアのシドニーにあるオペラハウスのすぐ近くで、木場は石段に腰掛けていた。荷物はいつものアタッシュケース一つだけだ。ケースの中にはノートパソコンと着替えと、後はちょっとした日用品が入ってる。

 日本人観光客が多く、新婚さんにカメラを頼まれたりする。木場はその度に快く引き受ける振りをしていた。

 でもさすがに二時間も佇んでいると地元の怪しげな連中が日本語で『いいものあるよ。買う?』とか言ってくる。路地に連れ込んでボコボコにしてやろうかと思うが『ノー、サンキュー』と凄みのある声で追い返した。

 あまりに暇なのでつい四ヶ月前の事を思い出してしまう。あの時、マリアは『逃げて…』と言った。木場はマリアを連れて行こうとしたが、目に見えない強い力で跳ね飛ばされた。

 マリアが光に包まれ、床が崩れ出した。木場は危険を感じ、夏美と共にエレベーターで地上に逃れた。

 施設の電気が一斉に消えた。そして地面が陥没し、宿舎も他の建物も地面の下に飲み込まれた。木場は梨花を背負い、夏美と一緒にゲートを手で開けて外に出た。

 強烈な白い光が地面の下から、まるで巨大なレーザー光線のように真上に放射された。それは二、三分ぐらい続いた。

 空から白い粒が降ってきた。光が収まり、木場は今出来た穴の縁に立った。大きな穴の底も白い粒で一杯だった。後にそれは微細な塩の結晶が集まって出来たものだと分かった。

 近畿地方全域でその光の柱を目撃した人が続出し、警察や自衛隊まで出動して大変な騒ぎになった。そんな中で木場は梨花を私道に置き去りにして、夏美と車に乗って大阪に向かった。

 夏美は梨花を放置した事を責めたが、連日の報道内容を知って納得してくれた。ギアは勿論だが、自衛隊員が潜入捜査をしていた事はー切出ていなかった。それと、行方不明者リストの中に田中真治の名前があった。田中はギアに消されたと木場は推測していた。

 当初、グレースケミカルもアメリカ政府もとぼけていた。と言うより被害者の立場を取っていた。しかし、日本政府はグレースケミカル日本支社の強制捜査を行い、アメリカ政府の調査員の入国を拒否した。これに対してアメリカは非難の声明を出したが、それ以来沈黙している。

 つまり、吉岡梨花の報告があったわけだ。あの現象は解明不能でも、グレースケミカルが日本国内で生物兵器を製造していたのは事実だ。

 あの施設で体験した事は文章にしてあるが、具体的な証拠が皆無なので発表は無理だろう。特にクートア博士とマリアの話は自分で読んでも笑ってしまうぐらいに荒唐無稽だ。

 時間の繰り返しも悪夢や思念の具現化も奇々怪々であるが、マリアはどうして光に包まれ、施設全てが塩になってしまったのだろうか。あそこで生じた異常なエネルギーや具現化物質を元の状態に戻す為にああなった、と推測は出来るが本当のところは分からない。

 ただ、塩の結晶構造が特異で薬理効果がある事が判明していた。脳を活性化させ、免疫力を高める作用があるらしい。ニトログリセリンのような反応もあるし、他にも何やら怪しげな効果があるようだが国で厳重に管理していて調査するのは困難だった。

 「木場さーん!」

 と夏美の声がした。声のした方を見ると、馬鹿でかい犬に引っ張られた夏美が走って来ていた。夏美は青色のワンピースを着て白いツバの広い帽子を被つている。

 「遅い」

 木場は、はあはあと息の荒い夏美に言った。

 「検疫官の人と話が通じなくて」

 「だから英語ぐらい喋れるようになれと言っただろ?」

 「だってー。ね、ジョン」

 何が『ね』なのか、と木場は思った。夏美にジョンと呼ばれたシェパードと何かの雑種らしい犬が尻尾を振ってバウッと吠えた。この犬は二度目にあの場所の調査に行った時、どこからともなくひょっこり現れのだ。夏美は一目見て『ジョンだ!』と言った。彼女が一緒に行動したというヒドゥンDタイプに似ているらしい。

 「行くぞ」

 木場は近くの駐車場に向かって早足で歩き出した。そこには現地用の足にと廃車寸前の中古車を調達していた。本当ならパートナーである夏美がやらなければならない仕事である。なのに犬の検疫期間に合わせて取材の日取りを決めて欲しいとか、待ち合わせはオペラハウスの前がいいとか、ワガママの言い放題だ。それを許している自分もどうかしているが。

 「木場さーん! グレースケミカルのオーストラリア支社の近くでー、脱走したデストロソルジャーが村を作っているって本当ですかー!」

 と夏美が木場を追い掛けながら言った。木場は唖然として振り向いた。

 「お前は何を大声で…。もう帰れ」

 「またまたー。冗談キツイですよお」

 夏美がそう言った時、何を思ったのか犬が『わおん!』と吠え、いきなり違う方向に走り出した。夏美は引きずられて『わっ!』と声を上げて転んだ。

 木場は呆れて溜息を吐いた。でも、いろんな意味で退屈だけはしないで済みそうだった。



 「ボス、行きましたよ」

 新聞に顔を埋めた田中が言った。田中はグリーンのスーツを着こなしていてサングラスを掛けている。突き出ていた腹も引っ込み、足を組み替える様も自然だ。

 田中の隣で同じように新聞を読んでいる振りをしていたギアは木場と夏美が去ったのを確認した。

 夏美が連れていた犬と目が合い、吠えられた時は驚いた。まるで知り合いのような顔をしたな、とギアは感じていた。

 「ボス、雇った連中が木場に接触します」

 と田中が日本語訛りのない、完璧な英語で言った。

 「見届ける必要はない。例の場所へ先回りする」

 ギアは事前に地元のチンピラに金を渡して因縁をふっかけるように頼んであった。木場に隙があれば取材道具が入ったアタッシュケースを奪って来いと言っている。が、さっきまでの様子だと失敗して返り討ちにあうのが関の山だ。

 ギアは大通りの道路脇に停めてあるベンツに向かった。田中はギアの後ろを普通に歩いているが、神経を集中してこの場の動きを捉えている。

 それにしてもあの塩は凄い。たった一粒で人間の能力を何段階も上げてしまう。持ち帰った分は研究中だが、脳細胞を増殖させ、細胞の老化を防ぐ働きがあるらしい。適量を摂取すれば人間を越えて別種の生物になる可能性もあるとも聞いた。日本政府が戦争も辞さない覚悟でアメリカ政府の介入を拒絶しているのは当然である。

 あの塩の合成は不可能らしい。ナトリウム以外に未知の物質が合まれていて、それは地球上のものではない。だが、合成出来なければ作ればいいのだ。

 グレースケミカル・オーストラリア支社は今や完全にCIAの管轄下にある。データは揃っている。マリア・クートアは一人ではないのだ。

 「ところで、ボス」

 田中が言った。こいつも塩をなめたお陰で有能な工作員になったものである。おまけに貴重な研究材料だ。上層部から『丁寧に扱え』と命令されているのが少し癪にさわる。

 「何だ?」

 「今回の仕事は木場にニセの情報を与える事ですよね?」

 「ああ」

 「結構簡単だと思います」

 「まあな」

 「早めに終えて、余った時間でサーフィンしましょう」

 「は?」

 「青い雄大な海にサーフボードを浮かべて波に乗るんです。それで、浜辺で美女を眺めてビールを飲むんですよ。あはは」

 「はー…」

 ギアの脳裏に自分がサーフィンをしている光景が広がった。ギアはやっぱりこの仕事を最後に引退しようと思った。



続く

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