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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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【DD15】

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【DD15】 木場誠二 今村夏美 アラン・ギア 田中真治

 木場は梨花の顔に浮き出たピンク色の筋を思い出していた。

 解剖されたアライグマの内蔵の質感と似ている。クートア博士が言っていた具現化による傷の修復だろうか。とすると、彼女も何らかの役割があり、それを遂行しようとしていた事になる。

 致命傷以外は修復可能だとクートア博士は説明していたから、夏美には命に別状はないと言った。しかし、それは自分が田中の妄想の産物だと認める事になる。

 自分はあのアライグマやここの物品みたいにその場で具現化したのではなく、この世に一人の人間として存在させる為に過去を変えて造られたとしてもいい気分はしない。と言うか、じゃあ両親もそうなのか? 祖父、曾祖父と辿って行けば、二十万年前にアフリカに出現したという最初の人間、エヴァにも影響している事になる。

 だが、もう一つの可能性が浮かんで消えない。夏美がここを迷路みたいだと言った時、『ゲームっぽい』と思った。今、目の前にあるドアは五角形の紋章のようなものをはめ込めば開くようになっている。どんな仕掛けになっているのかは不明だ。

 ドアを開けると通路が『エ』の形になってる場所に出た。部屋の出口今度はチェスの形をしたプラグを差し込むと開いた。この施設に勤める誰かがこの区画を見ていて、それが具現化しているのだろうが、実際にこんな仕掛けがあるとは思えない。

 この世界が現実でなければ全て説明はつく。自分も夏美も、田中やギアや吉岡梨花もゲームのギャラで、隠された謎や鍵を探してエンディングへ向かっているのではないか。最後に現れる凶悪で滅茶苦茶強いボスキャラを倒せば終わりだ。死ねばゲームオーバーだが、リセットすれはやり直しがきく。

 などという事を考えるなんて、精神的に参ってる証拠だ。目の前の問題を処理してからじっくり考えた方がいい。

 「ききき、木場さん!」

 夏美が叫んだ。ドアを開けるとそこはかなりの広さがある空間だった。古めかしいが、しっかりした造りの建物のロビーみたいだ。正面には壷を抱えた石像があり、二階部分は吹き抜けになっている。そこにゾンビ、ヒドゥン、キメラ、デストロ、リッカー、大きな蜘蛛、その他みた事もない化け物が何十匹と居る。

 デストロソルジャーとヒドゥンDタイプが見当たらない。と言うことはこの施設で放たれた生物兵器ではなく、みんな具現化した連中だ。

 木場は夏美を後ろに下がらせ、PLAGを構えた。本体に付いている安全装置らしきスイッチをSからFに切り替える。PLAGはヴーンと唸り、液晶メーターの数字の横に 『OK』の文字が出た。

 木場は引き金を引いた。なんの反動もない。ダメだ、こりゃやっぱり玩具だ、と思ったら狙ったヒドゥンの上半身がスパンと音を立てて爆発した。

 メーターの数字は『98』から『97』に変わっている。この数字は残弾数だ。木場はやばそうなヤツから狙いをつけ、片っ端から撃った。

 PLAGの発射するパルスーレーザーは直接目には見えないが、少し遅れて空気がプラズマ化した青い軌跡が出現する。命中した部分が爆発する理由は、瞬時に体内の水分が沸騰するからだろう。

 連続して撃つと、血飛沫にレーザーが遮られて威力が弱まる。雨が降っていたり霧が出ていたりしたら威力は半減するだろうし、ジャングルでは木の枝や葉っぱに当たってこれまた効果が落ちるはずだ。弱点の多い武器だが、今は絶大な効果を発揮している。

 飛び掛かってきたヒドゥンも、タックルしてきたデストロも二発で倒せた。時間にして一分ぐらいでこの場に居た連中は肉塊となった。辺り一面体液の湯気が満ち、汚物のような匂いが充満して吐き気がする。

 木場は生き残りが居ないかどうか調べた。死んだふりしているゾンビ二体にとどめを剌す。これでPLAGのメーターは『5』になった。狙いを外さなければタイフーンでもどうにかなるだろう。

 こんな高性能なレーザーライフルが実戦に投入されたら陸戦の在り方も変わるし、もっと出力を強めたら、と考えて木場はハッとした。これも妄想の産物ではないのか? コバヤシという研究者が夢見ていて、クートア博士が誘導して引き出したのでは…?

 考えればキリがない。木場はこのロビーのような空間にある三つのドアを調べた。そのうち二つドアの向こうには土壁だった。残る一つ、ここに入ってすぐ右にあるドアはギイィィと音を立てて開いた。

 闇が広かっていた。その中にベッドが一つあった。傍らにライトスタンドがある。明かりはそれだけだ。床はコンクリートぽいが、壁が確認出来ない。目を凝らしてもベッドの向こう側が見えない。まるで無限に広い場所に入っだようだ。

 「木場さん、あのベッド…」

 木場の後ろから覗いていた夏美がベッドを指差して言った。ベッドに白いネグリジェを着た少女が仰向きに横たわっている。木場と、梨花を背負った夏美は少女に歩み寄った。

 が、ベッドの横に大きな何かがうずくまっでいるのに気付き、二人同時に足を止めた。

 最初、それは土下座をしている長い金髪の裸の女に見えた。でもサイズが大きすぎる。湾曲した背中の長さがベッドの倍はある。肌もぬらぬらしていて両生類っぽい。

 そいつがムクッと顔を上げて上体を起こした。乳房が見え、くびれたウエストが確認出来た。太股のラインも結構いいな、と思った木場は目をむいた。

 口の所に頭があった。そいつの巨大な顔の口が、人の顔になっているのである。

 その顔は、ベッドで横たわって目を閉じた少女と同じだった。少女がマリアなら、この怪物もマリアなわけだ。

 そいつがのっそりと立ち上がった。身長は8メートルぐらいか。木場は強い畏怖を感じた。姿はスタイルのいい怪物だが、もし神が降り立ったならこんな感じがするのだろうと思った。

 木場は身体が震えようとするのを堪えてPLAGを構えた。そいつは木場に歩を進めようとしている。ベッドに横たわるマリアに近付けさせないつもりだ。

 そいつの足を撃った。タイヤがパンクするようなバスンという音がして、膝頭が破裂した。そいつは床に無事な方の膝をついた。なんだ、見掛けより弱いんだなと木場は思った。タイフーンの方が盗かに強敵だった。

 でも、残弾は四発だ。トドメを刺すには急所を撃だなければならない。多分、あの口にあるマリアの顔だ。顔を破壊すれば終わるのだ。

 引き金に掛けた指に力を入れた時、木場は心臓が早鐘のように打っているのを自覚した。俺はなんでこんなにドキドキしているんだ?

 振り返って夏美を見た。彼女も不安そうな顔をしている。

 「覚えているか?」

 と木場。

 「いいえ。…でも、デストロと戦った時みたいな感じはしてます」

 「俺も妙な感じがしている」

 木場は、怪物の膝の傷が急速に洽って行くのを見つめながら言った。白色の具現化物質が傷の中に溢れ、出血を止め、傷を塞ぎ、最後は皮膚のようになる。やがてそいつは立ち上がった。

 撃つのを躊躇っていると、そいつは木場を蹴ろうとした。木場は『おわっ!』と叫んで横に飛んだ。夏美はおぶっていた梨花共々後ろに倒れた。

 これは一度、いや何十回と体験している状況ではないのか? 成り行き的にはPLAGで怪物を撃ち倒してベッドで寝ているマリアが目覚めてジエンドだ。それが間違っているからまた同じ時間を繰り返しているのでは…。

 よく考えろ。この怪物はどうしてマリアを守ろうとしている? 誰の想いから造られたんだ? クートア博士か? マリア本人か? この状態は何を意味しているんだ? 

 マリアは十四歳の時に交通事故で意識を失い、植物人間になった。

 クートア博士が人間の無意識からエネルギーを取り出す実験をした。

 最初に具現化したクートア博士は自分の理想で、本人が始末した。

 もう一人のマリアが現れて本当のマリアをここに連れてきた。

 施設に居る人達の恐怖が具現化してマリアとの接触が困難になる。

 となると、やはりマリアがこの怪物を造ったのだ。本人を連れてきたマリアが変貌してこうなった、と考えるのが合理的だ。

 ではマリアは目覚めたくないのか? どうしてだ? まさか夢が自意識を持って妨害しているとでも言うのか?

 「むう…」

 怪物の攻撃を避けつつ木場は唸った。段々と動きが速くなっていってる。このままでは蹴られて踏み付けられてしまう。どう考えても怪物を倒さなければならない。

 「木場さん!?」

 夏美が叫んだ。木場はベッドのマリアをPLAGで狙ったのだ。怪物を倒すのが間違っているのなら、ベッドで寝ている方が悪夢の番人だ。

 「くっ!」

 木場が引き金を引こうとした時、また妙な感じがした。だが、指が震えて引き金を引いてしまった。

 PLAGからパルスーレーザーが発射され、青い軌跡を描いた。木場はゾッとした。以前にも同じ感覚を味わっている。

 しかしパルスーレーザーはマリアの頭部を外れて枕に当たり、青白い炎を上げた。その時、レーザーで切断されたマリアの髪の毛が宙に舞った。

 木場は切れた髪の毛をジッと見た。クートア博士が言った『ヘアー』という単語が頭の中で蘇る。木場は怪物の接近をかわしつつ、その髪の毛を掴んだ。

 それは手の中でボロボロと崩れた。具現化物質に違いない。

 今度は怪物の口にある顔の横を狙った。少しでもずれると顔に当たってしまう。木場は怪物の攻撃を避け、片膝をついて狙いを定め、引き金を引いた。

 怪物の左の顎が破裂した。口にある顔は無事だ。怪物は苦しそうにもがいている。

 落ちてきた血の中に髪の毛が混じっている。木場は怪物が苦しんでいるうちにそれを拾った。

 崩れない。細くてしなやかな金髪だ。木場は心の中で『そうか!』と叫んだ。

 PLAGで怪物の腹部を三回撃った。怪物の内臓が露出したが、まだ死にそうにない。

 「スパスを!」

 木場が夏美に言った。夏美はあわあわと慌てながらも持っていたスパスを木場に渡した。

 至近距離でありったけの散弾をぶち込んだ。散弾がなくなると、今度はP90を連射した。

 怪物はのたうち回り、仰向けになって動かなくなった。しかし、具現化物質が傷から溢れている。木場はナイフを取り出して怪物の口にあるマリアの首の周囲を切り裂いた。

 マリアの首は肩に繋がっていた。その下には身体がある。やはりマリアは怪物に埋め込まれていたのだ。

 「いよっ!」

 木場はマリアの手を持ち、思いっきり引き上げた。怪物の中から粘液まみれのマリアの上半身が現れ、木場は抱きかかえた。

 マリアが怪物から離れた時、怪物の動きが止まった。木場は全裸のマリアを抱いてその場から離れようとした。

 「え?」

 木場は立ち止まって腕の中のマリアを見た。梨花を背負い直した夏美も木場の方を向いた。

 マリアが目を開けていた。青い、綺麗な瞳だ。唇が微かに動いている。何か言おうとしているようだ。

 空間が明るく輝き出した。今まで真っ黒だったのに、今度は目を開けていられないほど明るく、白くなった。

 倒れている怪物が白い粒になってゆく。電気スタンドもベッドも、マリアの偽物も細かい粒になって崩れ始めた。

 異様な事が起こっているのは分かるが、これからどうなるというのだろうか。まさか、また失敗してやり直しなのか…。

 木場と夏美はマリアを見つめた。マリアは優しげな眼差しで二人を見上げ、口を開いた。



 ギアは田中と一緒に、施設を取り巻いている高圧電流が通じたフェンスをレーザーナイフで切断し、脱出した。彼は施設を見下ろせる草ぼうぼうの斜面に腰を降ろし、息を整えていた。隣では田中が再び脱臼した右肩を左手で押さえて呻いている。

 ギアはタイフーンの触手の攻撃で足を負傷していた。傷は見た目以上に深く、血がぴゅーぴゅーと吹き出していた。十分以内に脱出しないと地下の水素貯蔵庫が爆発する。そうなったら施設が陥没し、巻き込まれてアウトだ。その事が念頭にあるから流れ出る血をそのままにして作業に励んだ。田中はフェンスに人が通れるほどの穴を開け、外に出た時に躓いて尻餅をついた。その際に右手をついて肩を脱臼したのだ。

 「木場さん、爆弾の解除に成功したみたいですね」

 田中が痛がりながらも嬉しそうに言った。

 「そう、みたいだね…」

 ギアは片眉を上げて答えた。腕時計を見る。あれから二十分以上経っていた。

 教えた手順通りにすれば絶対に爆発するはすである。と言う事は、正しい解除方法を行ったわけだがどう考えても不可能だ。もし疑って他のやり方を試みたとしても、組み合わせは何百とあるのだ。木場は一体…。

 「何ですか?」

 と田中が訊いた。ギアは自分がぶつぶつと何か言っていたのに気付いた。

 「…出血が酷くてな、貧血を起こしているようだ」

 「病院へ行きましょう」

 「ふむ…」

 ギアは心配そうに自分を見る田中をどうしようか悩んだ。施設が爆発したら殺して死体を炎の中に放り込んで始末しようと思っていたのだが、もうそれは無理だ。

 「シンジと呼んでいいか?」

 「あ、はい」

 「私の事はある程度キバから聞いていると思うが、実はCIAの工作員だ」

 「はあ」

 「シンジは英語が出来るようだね。そこでだ、君をスカウトしたい」

 「は?」

 「こういう例は結構あるんだ。報酬もいいし、アメリカで暮らせば市民権もすぐに手に入る。老後は優雅な年金暮らしだ」

 「えーっと」

 「しかし、今すぐ返事をしなければこの話は無かった事になる。どうする?」

 ギアは『どっちでもいいんだぜ』と素振りで表現した。まるで悪質なキャッチセールスである。

 「分かりました。宜しくお願いします」

 と田中はあっさりと承諾した。

 「おお、そうか」

 ギアはこんな申し出にイエスと答える人間が居たので驚いた。

 田中は、まさかCIAの職員になれるとは思っていなかった、凄くラッキーだ、警備員の仕事を辞めようとしていた、アメリカつていい国ですね、などとまくし立てた。ギアは田中のお喋りを制して口を開いた。

 「ではシンジ、最初の任務だ。私を和歌山のとある漁港に、迅速に送り届ける事」

 「分かりました! あの、なんてお呼びすれば?」

 「ふむ…。ボス、でいい」

 「ボス! あ、でも僕はその後…?」

 「当然君も潜水艦でアメリカ行きだ。その後の事は私に任せなさい」

 「了解!」

 田中は敬礼した。彼が身の危険を感じて演技をしている可能性もあるが、下級工作員に向いている事も確かだ。使えるなら使ってもいいか、とギアは思った。

 ギアは田中の脱臼を乱暴なやり方で治療した。田中はロバのような悲鳴を上げたが、どうにか骨が元の位置に収まった。その後、ギアは田中を従えて施設から離れた。

 グレースケミカルが敷いたアスファルトの私道の途中で、ギアは休憩を命じた。貧血で気分が悪くなったのだ。

 道の端に座り込むと、ギアは眠くなった。ここで眠ってはいけない、と自分に言い聞かせているうちに眠ったらしい。

 気が付いたら、田中が何か言いながらギアの身体を揺さぶっていた。顔を上げたギアは、田中の指差す方向を見た。

 宿舎の方に巨大な光の柱が出現していた。音は全くしていない。柱の先は肉眼では確認出来ないほどの高さにあった。成層圏を越えているかも知れない。

 「雪…?」

 と田中が日本語で呟いた。白い粒がパラパラと降ってきていた。

 ギアは手のひらでその粒を受けた。何かの灰かと思ったが、細かい結晶の塊だと分かった。

 「これ、塩ですよ」

 田中が自分の手で受けた白い粒をなめて言った。ギアは『こいつ、大胆だな』と思った。



続く

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