プロフィール

Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

当ブログでは、私の発行済みの電子書籍を紹介をしております。また、楽しんで頂けるようエンターテインメントブログを目指しています。ごゆっくりお楽しみ下さい。

※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

タグロゴ

カテゴリ

最新記事

CMエリア②

最新コメント

月別アーカイブ

FC2掲示板

ブロとも申請フォーム

RSS

サードライン



【本文抜粋】

 その時だった。くぐもった、押し殺したような声が聞こえた。ガラの悪い関西弁で罵る声もする。笑い声や話し声も聞こえる。それらの声は、街灯の少ない暗い道路の先から聞こえて来るようだった。
 ドスッ、と布に包まれた肉を殴る音がして、黒館はママチャリを置いて歩き出した。少し行くと、黄色い柵のある公園の出入口があった。
 あまり広くない公園の中で、数人の高校生ぐらいの年齢の連中が集まっている。小太りの黒縁メガネを掛けた少年が取り囲まれていた。彼を四人の少年達が代わるがわる蹴ったり殴ったりしていた。
 辺りを見回す。少年達以外は誰も居ない。公園の出入口にゆっくりと近付いてみる。黒いジャンパーを着た長髪の少年が黒館に気付いた。口の片端を吊り上げてニヤニヤ笑っている。逃げるかと思ったらいきなり小太りの少年に飛びかかった。小太りの少年は仰向けに倒され、その上に長髪が馬乗りになって無茶苦茶に殴り出した。他の少年達は指をさして笑っている。
 黒館は少年達に向かって歩を進めた。長髪以外の者も黒館に気付く。誰も動こうともしないし何も言わない。薄ら笑いを浮かべている。こりゃいけるな、と黒館は思った。
 「なんやオッサン、なんか用か?」
 トレンチコートを着て、髪を刈り上げた少年が挑戦的に言った。黒館はそいつを無視して、小太りの少年を殴り続ける長髪を足でグイッと押した。
 「なにすんじゃわれっ!」
 押された少年は、立ち上がって黒館に迫った。黒館は両手をコートのポケットに入れて少年を無表情で見つめる。
 少年達は無言で目線を交わした。やるかどうか確認しているようだ。公園に面した道には誰も通りがかりもしない。黒館は背は高いが痩せている。酒も飲んでいる。少年達は散開して黒館の四方を取り囲んだ。
 「ボケがあっ!」
 最初に長髪が黒館に殴り掛かった。黒館は長髪の拳が飛んでくるその軌跡を見極め、左の頬で受け止めた。首を少し傾けて衝撃を和らげる。全然痛くない。酒を飲んでいるからではなく、威勢ばかりのヘロヘロパンチだからだ。長髪はもう片方の手を繰り出した。今度は前歯の上、鼻の横に命中した。ちょっと痛かった。
 「ちっ…」
 表情の変わらない黒館を見て、長髪が唾を吐いた。喧嘩馴れしているヤツだったら取り敢えずは退く状態なのに、長髪はムキになって殴ろうとしている。
 まるでサカリのついた犬みたいだ。たまった性欲のはけ口に暴力を使っているのだろう。集団でやれば個人の責任も薄くなると考え、自らエスカレートさせて興奮しているのだ。
 黒館は長髪のパンチを受け続けた。コートを広げ、見た目以上の間合いを取っているので腹を殴られても何も感じない。さすがに顔は痛みを感じていたが、鼻の天辺と目と前歯は拳が当たる瞬間に避けていた。
 「お?」
 黒館は背中の下の辺りに軽い衝撃を感じて、前のめりになった。他の誰かが尻の上の辺りを蹴ったらしい。
 「いてっ」
 反動で突き出した顔に長髪のパンチが命中してしまった。今度は仰け反ってしまう。サンドイッチ状態はヤバイと思ってサッと横に移動した。公園の木を背中にして、また無表情のまま立ち尽くす。目を吊り上げ、頭に血が昇っている長髪が突進しようとしたが、白いセーターを着た浅黒い肌の少年が長髪の肩を掴んで制止した。
 白セーターは黒館を睨み、他の三人を遠ざけようとしている。そしてズボンの後ろに手を回し、未成年者の購入、いや、発売そのものが条例で禁止されているバタフライナイフを取り出した。
 かちゃかちゃと金属の触れ合う音を立てて、白セーターは片手でバタフライナイフの刃を出した。なかなかサマになっている。冷静そうな素振りだ。
 「恐いねえ、近頃の子供は…」
 黒館はそう呟いてデジカメを取り出した。素早くフラッシュ設定して、シャッターを切る。少年達は驚いて後ずさった。二回、三回と立て続けに閃光を浴びせる。
 白セーターもナイフを持った手で目を覆った。黒館はコートを翻し、白セーターめがけて数歩走り、前蹴りを放った。
 「んあっ!」
 白セーターは黒館の長い足を腹部に受けて、後方にもんどりうって倒れた。黒館は白セーターの手首を踏み、バタフライナイフを取り上げる。
 「お、おんどれーっ!」
 と白セーターは憤怒の形相で叫んだ。黒館は手首を踏み付けていた足を退け、起き上がろうとする白セーターの胸にまた蹴りを入れた。
 「ははは」
 黒館は笑った。面白いように転がりやがる。まるで起き上がりこぼしだ。貧弱なクセにいきがる奴を前にすると、残酷な気持ちがこみ上げてくる。自分も同類ではあるな、と思いつつ白セーターの顔を踏んだ。そして体重を掛けて膝を落とす。膝頭が顔面の真ん中、鼻の頭に命中した。
 「がっ…」
 白セーターは顔面を押さえてのたうち回った。よほど痛いのか声さえ出さない。黒館は苦しみ悶える白セーターをサッカーボールのように蹴って、他の少年達の元に転がした。
 「おまえーっ!」
 「殺すぞ、コラっ!」
 「ざけんな、ボケっ!」
 などとわめく少年達に対して、黒館はまたフラッシュを浴びせた。そしてデジカメをポケットに納め、その代わりに取り上げたバタフライナイフを構える。腰を低くして、すり足で接近する。地面の砂がザッザッと音を立てる。
 「オジサンはチミ達に襲われて、正当防衛で殺すんだよー。証拠の写真も撮ったから、オジサンは無実なんだよー。恨まないでおくれよー」
 黒館は不気味な笑みを浮かべ、甲高い声で言った。これでもし少年達が襲ってきたら遠慮無く刺してやろうと思っていたが、まずセーターの少年が起き上がって逃げ出した。他の連中は一瞬迷った挙げ句、一斉に黒館に背中を向けて走り出し、公園から出て行った。
 「ま、こんなものか…」
 黒館はバタフライナイフを折り畳んでコートの内ポケットに仕舞って呟いた。顔が濡れているような気がして触ってみると指に血が付いた。鼻の中が切れているようだ。サラ金の宣伝用のティッシュを取り出して鼻をかむ。血の混じった粘液が出た。



最初はピカレスクロマン(ハードボイルド)として設定し、書き上げたんだけど、エロ描写を全部引っ剥がしました。諸々の規約がありますので。
そのお陰で完成度が上がったように思えるのが不思議。
関連記事
このエントリーのタグ: 武澤信幸 amazon Kindle SF長編小説
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す