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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

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※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

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【DD10】 木場誠二 田中真治

 地下三階の通路で木場と田中はヒドゥンニ体と出くわした。そいつらは身体に赤色のまだら模様がある改良版らしいが、狭い通路ではこちらの方が有利である。

 田中を後方に位置させ、木場はP90でヒドゥンの胸を撃った。P90はよく考えられたアサルトライフルで、射撃の反動で狙いがぶれる事もなく、二体共に三発で、計六発でしとめられた。

 その間に、田中がクーガーで二回撃った。一発はヒドゥンの腹部に命中したが、もう一発は外れた。

 「反動、かなりありますね…」

 田中は手に持ったクーガーを見て言った。

 「田中君、命令した覚えはないが?」

 「あ、すみません。でもこっちに来そうだったもんで…」

 「人間は興奮していると距離を見誤る傾向がある」

 木場はそう言って倒れているヒドゥンの傍らに立った。ヒドゥンの口から緑色の液体が出ていて床に広かっている。

 「それ、毒じゃないですか?」

 田中が言った。木場もそう思ったが黙って先に進んだ。

 地下三階は広めの研究室が二つあるだけだ。通路を隔ててドアが向かい合っている。両方ともにロックはかかっていない。

 木場は左手のドアの右側に立った。田中は左側に立たせる。

 「ドアを開けたら突入する。人間は撃つな」

 「は、はい」

 木場はドアの開閉スイッチを押した。目に飛び込んできたのは三体のヒドゥンだった。

 まず一体に集中して連射、仰け反ったのを確認してもう一体を攻撃した。残る一体を撃とうとしたが、どこに行ったか姿が見えない。

 「だあっ!」

 と田中が声を出し、斜め上にクーガーを向けて撃った。見ると、天井に爪でぶら下がっている。木場はそいつをP90で撃ち落とした。

 床に落ちたヒドゥンの頭を撃ち、残りのもとどめを剌した。もし自分一人でこの場にクーガーとスパスだけで入っていたら危なかっただろう。

 また田中が発砲した。今度は部屋の奥の方だ。

 壁に人型の生き物が張り付いている。木場は田中の当たらない射撃を止めさせてそいつに接近した。

 それは全身の筋肉がむき出しになっている奇怪な生き物だった。木場はP90を田中に渡し、スパスを右手で持ち、手を伸ばして出来るだけ接近して背中を撃った。

 そいつは悲鳴を上げ、長く鋭い舌を伸ばして壁から剥がれ落ちた。まだ動こうとしていたのでもう一発撃つと背中にぽっかりと穴が開いた。

 「ヒドゥンと違いますねえ…」

 田中が気味悪そうにそいつを見て言った。

 「リッパーだ」

 「リッパー?」

 「ゾンビが変化するとこうなる。正式には『Z2進化型』というらしい。が、あまりに危険なのでイギリスに実在した殺人鬼『切り裂きリッパー』からリッパーと呼ばれるようになったそうだ」

 木場はリッパーの脳組織が露出した頭部を足で突っついた。目は退化していて、まるで頭をくるっとひっくり返したようだ。

 リッパーは人間がZウイルス感染症に罹った場合の最終形態である。木場は生きているのを実際に見た事はないが、ジェニファーから受け取ったCCファイルに表記されていたのを覚えていた。

 CCファイルとは、カラカルの特殊警察隊の一人のメンバーの頭文字を取ったカーサ調査報告書の事である。ジェニファーは、わけあって名前は教えられないと言っていた。木場はそのファイルを信用し、調査を行っていたのだ。

 この部屋は用途不明の機材で溢れていた。その中に大きな培養ポットが五基ある。全部空っぽだった。ポットはどこも壊れていない。この中でヒドゥンが培養、保管されていて、ゾンビを駆逐する為に放たれたのだろう。

 「これか…」

 木場はギアが付けたのと同じバッジを見つけた。専用のコンピューターに繋がっているパネルがあり、盾の形をしたバッジが並んで収められている。これを付けていればヒドゥンやデストロソルジャーに襲われなくて済むと喜んだが、バッジの裏が開いていた。どうやらそこにカメラに使うような電池を入れなければいけないらしいが、その電池が見当たらなかった。

 「あの、木場さん」

 と田中が培養ポットを見ながら言った。

 「なんだ?」

 「この右の一つ、他のより大きいですよね」

 「みたいだな」

 田中が言うように培養ポットの大きさは不揃いだった。木場は大きいポットに『タイプD』と記されているのを見つけた。

 ポットには獣の体毛のような毛が付着している。他のには無い。とすると、これには別のタイプのヒドゥンが収まっていたと考えていいだろう。

 「多い…」

 木場はぼそりと呟いた。田中は木場が言わんとしている事を悟り、頷いた。

 ガレージの前に一体倒れていた。通路で二体、この部屋で三体のヒドゥンを倒した。全部で六体だ。なのに培養ポットは五つだ。そのうちの一つは通常のとは違うタイプである。

 「他にも似たような場所があるんじゃないですか?」

 と田中。

 「そうかもな」

 木場はそう言い、ずらっと並んだコンピューターを調べた。

 殆どのファイルがパスワードが必要で覗けなかった。だが、ここで行われていた研究はすぐに出てきた。研究員がいちいちパスワードを入れるのを面倒がったのだろう。

 ヒドゥンの製造過程はある程度分かっているつもりだった。が、木場はモニターに映し出されたファイルに『単性生殖』という項目を発見して驚いた。

 人型生物兵器はコストもかかるし人間を素体としている故に大量生産に向いていない。いくら優秀なのを造ったところで数が揃わなければいずれ駆逐される。そう言う欠点を補う最善の方法は何か? それは人型生物兵器に繁殖力を持たせる事だ。

 ここで開発していたのは『自動的に増える兵器』だったのだ。カーサが名を変えてまで悪魔の如き研究を再開したのは十分元が取れる算段があったからだ。

 ファイルには、ヒドゥンは二十五日周期で十から二十個の卵を産むとある。それらの卵はすぐに孵化し、約二ヶ月で親と同じ姿になり、卵を産む。

 「ネズミ並ですねえ」

 と木場の肩越しにファイルを見ていた田中が言った。

 「人を喰って増えるネズミだ」

 「ゾッとしますね」

 田中は気味悪そうに言った。

 その後、木場と田中は部屋の中を調査したが特に何も見つけられなかった。

 通路に出て、向かいのドアを開ける。今度もスワットのように突入したが動くものはなかった。

 その部屋はヒドゥンの研究室と似ていたが、培養ポットは巨大なのが一つあるだけだった。コンピューターを調べると『ヒグマ―セアカゴケグモ合成変異体・タイフーン』というファイルが出てきた。どうやら蜘蛛の遺伝子を取り入れたウイルスをヒグマに感染させて様子をみていたらしい。ファイルの最後には『制御不能により地下八階の能力査定室に移送後処理予定』とあった。

 「処理されていたらいいんですけどね…」

 と田中。こいつは言わなくていい事を言うヤツだな、と木場は思った。

 この部屋にも他に何もなく、地下三階の調査を終了してエレベーターで地下六階へ向か
った。

 地下六階の通路にはゾンビが五体も居た。そのうち二体は這いずっていた。木場は立っているゾンビにP90で弾数を確認しながら攻撃した。三発で倒れるが中には四発以上必要なヤツも居る。P90とスパスではどっちが効率的だろうかと考えていたら田中が這いずりゾンビにしがみつかれていた。

 「ひぎゃぁぁぁぁ!」

 田中はジタバタと暴れ、クーガーを乱射している。木場はまず田中のクーガーを蹴りで叩き落とし、足にまとわりついているゾンビの頭を踏んで潰した。

 「すすす、すみません…」

 田中は後方にずっこけ、尻餅をついて謝った。木場はクーガーを拾って田中に渡した。

 頭の出来が良くても実経験が乏しいとパニックに陥りやすい。田中は運動神経もあまり芳しくないようで、尻餅をついた拍子に肩を痛めたらしい。よく見ると、顔色が土気色になっていた。かなり堪えているようだ。

 この階には保安室があった。椅子に白人の男の死体が腰掛けていた。田中はそれを見て『あう…』と呟いた。

 男は白衣を着ていて首が取れかかっていた。足元にはデストロソルジャーが持っていたレーザーナイフとバッテリーが落ちている。レーザーの刃が出現する部分を首に当ててスイッチを入れればこうなるだろう。

 男のネームプレートには『ジェイソン・スミス』と記されている。彼がP90をエアシューターで地下二階の保安室に送った主だろう。

 木場はエアシューターを調べた。有り難い事に、フル装填のP90用のマガジンとグレネードガンが入れてあった。

 これでグッと火力が増した。P90、クーガー、スパス、グレネードガン、それにレーザーナイフ。これだけあれば脱出まで十分持つ。

 「あの、肩が…」

 田中が低い声で苦しそうに言った。

 「どうした?」

 「痛い…」

 「折れたか?」

 「さ、さあ…」

 田中の顔は苦痛に歪んでいる。木場はスミスの亡骸を足で蹴って倒し、田中を座らせようとしたが、彼は一歩進む度にうめき声を発した。

 木場は田中の右肩を調べた。腕の骨が後方にずれている。

 「脱臼だ」

 「は、はあ…」

 「我慢しろ」

 「え?」

 木場は田中の右腕を左手で掴み、右手で肩を固定して思いっきり引っ張った。

 「ぎいいいいい! きょうううう!」

 田中は怪鳥のような悲鳴を上げた。木場は『痛いだろうなあ』と思いつつ関節が元に戻るまで引っ張り続けた。

 グニっとした感触があり、やっと骨が元の位置に戻った時には田中は脂汗をかいて口をパクパクさせていた。

 「動けるか?」

 木場はその様子が少しおかしくなり、笑いを堪えて訊いた。

 「無理…」

 田中は虚ろな顔で呟いた。木場は保安室のロッカーに入っていたタオルで三角巾を作り、田中の右腕を吊ってやった。動かさない限り痛みは無いらしいがさっきの治療でぐったりしている。

 何故か恨みがましい顔をしている田中を置いて、木場はこの階の他の部屋の調査を行った。構造上、下に行けば行くほど部屋数は少なくなっていて、保安室以外には一部屋しかなかった。

 その部屋は今まで見た部屋とかなり様子が違った。培養ポットや薬品類が一切無い。代わりに工作機械が幾つもある。

 台の上に筒状の物が置かれていた。それはレーザーナイフのと同じバッテリーにコードで繋がっている。アサルトライフルのような形状をしているが銃口にはレンズがはまっていた。

 もしやレーザー銃か、と思って引き金を引いたが何も起こらない。観察すると、銃身部分に空洞があった。何かの部品が欠けているようだ。

 レーザー銃などSFに出てくるアイテムで、実用化は不可能だと思っていた。でもここでは本気で開発していたようだ。

 木場はコンピューターを操作して、レーザー銃に関するファイルを調べた。ファイルはすぐに出てきた。正式名称は『パルス・レーザー・アサルト・ガン』となっている。長ったらしいので頭文字を取って『PLAG』と呼称するとある。発音するならプラグかプレイクだ。

 既に何度か実験しているらしく、その様子がコンピューターに動画として記録されていた。木場はその画面を再生した。

 5リットル入りのミネラルウォーターのペットボトルが映り、次にPLAGを構え、サングラスをかけた研究員が映った。

 次の瞬間、ペットボトルが爆発して蒸発した。実にヘタクソな撮り方で、ペットボトルとPLAGの関係がいまいちよく分からない。高出力のパルスレーザーでペットボトルの中の水が沸騰して水蒸気爆発を起こした、と考えていいだろう。

 「ん…?」

 木場は静止した画面を見て目を凝らした。この実験が行われたのはこの部屋だとすぐに分かった。ペットボトルが置いてあったのが壁際で、PLAGで撃ったのが木場から少し離れた場所だ。その場所にバッテリーがずらりと並べられたスチール製の棚がある。しかし、今見るとそんな物は無い。この部屋の映像ではないのだろうかと思った木場は壁を見て首を傾げた。

 バッテリー棚があった場所が白っぽい壁になっている。そこには人物が浮き出るように描かれていた。最初はレリーフかと思ったが、それにしては線が荒く、つい最近ノミで彫ったような感じがする。

 描かれているのは少女のようだがはっきりとは分からない。地下施設には余計なものが一切無い。研究員の趣味にしては妙だ。

 その下の床が窪んでいた。壁と壁との接合面も微妙に歪んでいる。強い負荷がかかってそうなったようには見えない。

 「なんなんだ…」

 と木場は呟き、またコンピューターの操作に戻った。レーザー兵器関係以外のファイルはやはりパスワードが必要で覗けない。

 バイオハザード以外に何かが起こった、いや今も起こっているのは分かっている。その手がかりを見つけなければならない。自分にはそうしなければならない義務がある、と木場は感じ始めていた。

 覗けるファイルを片っ端から引っぱり出した。PLAGの設計図、部品図、出力と破壊力の関数表、エネルギー消費表、レーザーナイフの設計図、工口写真、ゲームなどが次々に出てきてもう止めようとした時、研究員のメモらしきファイルを発見した。

 記入者はS・Kとなっている。四日前の日付から数十行の記述があった。

 木場はざっと目を通した。事の始まりは突然のバイオハザード警報だった。全ての研究員、作業員、保安員がただちにマニュアル通りの行動を取った。各階のエレベーターホールは閉鎖。各自が保持するカードキーで行ける場所以外へは行けなくなる。ウイルス管理室に高濃度オゾンを注入し紫外線を照射。

 K氏は『こんな馬鹿げた場所で、墓地の底のような研究室でゾンビにならなくて良かった』と書いている。

 その後、バイオハザード警報は解除。数時間は何事もなかった。が、地上でゾンビ化した作業員が出現した。S・K氏は保安員からの報告でこれを知る。

 保安員がゾンビを捕獲し、研究員が血液検査を行う。Zウイルスを検出し、再びバイオハザード警報を発令。施設の徹底的な滅ウイルス作業を開始。しかし、何故かウイルスは施設全体に蔓延し、二十四時間で半数以上がゾンビ化。用意してあったZウイルス抗体も効き目無し。生き残った者達が武器を取り、ゾンビの一掃をはかる。

 ヒドゥン、デストロソルジャー開発部ではゾンビに対抗する為にそれぞれを施設内に放つ。制御バッジは全員が持っているわけではなく、逆に多くの犠牲が出る。

 S・K氏は親交のあった女性研究員と連絡を取る。ゾンビから抽出したウイルスは数分で溶解し、成分不明の有機物と化す事を発見。そして『空気中にウイルスは存在しない』事を突き止める。

 人間がゾンビ化する時、振動のようなものを感じるという報告が多数あり、S・K氏とその女性研究員は調査を開始。研究員は『何らかの波動による細胞の変質ではないか?』と推測。完成したPLAGとバッテリーパックを持って地下七階へ赴く。

 記述はこれだけだ。木場は腕を組んだ。波動による細胞の変化がバイオハザードの真の原因で、その波動を出す何かが地下七階にある、と書いてあるわけだ。

 「あのぉ…」

 と声がしたので木場はびっくりしてP90を構えた。

 「ぼぼぼ、僕です!」

 田中が開けっ放しのドアから顔を覗かせて言った。

 「どうかしたか?」

 「変な音がしたんですけど」

 「いつ?」

 「さっき。気付きませんでした?」

 「いや…」

 と木場は呟いて耳を澄ました。すると遠くの方からドンという重い音がした。

 「何でしょうねえ?」

 田中が不安そうに訊いた。その直後、壁の向こう側から何かが動く音がした。それは下からやって来て、上に移動して行った。

 壁の向こうに何かあったか木場は思い出した。そこは大型リフト坑だ。リフトにはアパッチが乗せてあり、地下一階で止まっているはずだ。

 壁越しでも巨大な何かが昇って行ったと感じられた。しかもかなりのスピードだ。ヒドゥンやデストロソルジャーだとは思えない。

 どうするべきか? わざわざ未知の脅威に出会いに行くか、それともどこかにあるだろう制御室を探すべきか…。

 「行くぞ」

 木場は田中にそう言い、部屋を出た。田中は右肩を押さえて木場の後を追った。



続く
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