プロフィール

Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

当ブログでは、私の発行済みの電子書籍を紹介をしております。また、楽しんで頂けるようエンターテインメントブログを目指しています。ごゆっくりお楽しみ下さい。

※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

タグロゴ

カテゴリ

最新記事

CMエリア②

最新コメント

月別アーカイブ

FC2掲示板

ブロとも申請フォーム

RSS

【DD6】

CODE

【DD6】 吉岡梨花 今村夏美

 梨花は目を開けた。身体がジンジンと痺れている。コンクリートの壁がある。ここはどこだろう? どうしてこんな所に居るのだろう?

 「うっ!?」

 梨花は脇腹に痛みを感じて呻いた。そして現状を理解した。

 ヒグマの化け物、タイフーンの一撃を受けたのだ。その後、なんとか逃げ延びたが傷が酷く、出血が止まらずに気を失った…。

 どんどん意識がはっきりしてくる。そしてゾッとした。自分はどうしてまだ生きているのか? 脇腹が裂けていたはずだ。

 左手で右の脇に触れてみた。服がギサギサに裂けていて血もベットリと付いている。でもその下に傷はなかった。

 夢でも見たのだろうか。ならばこの床に広がった大量の血は誰の血なのか?

 梨花は服の下に手を差し込んだ。傷は無いが、違和感を感じた。感覚が鈍く、少し盛り上がっているようだ。

 見ると、裂けていたはずの皮膚の部分がピンク色になっていて、そこだけ神経が麻庫していた。

 梨花は立ち上がった。傷は確かにあった。その証拠にズキズキと痛む。でも今は塞がっている。何故だ?

 近くにドアがある。梨花はそこまで歩いてまた呻いた。気分は悪いし喉が猛烈に渇いている。普段なら十分注意を払うのだが、今はそんな余裕は無かった。トカレフを手に持って乱暴にドアを開ける。

 その部屋は大きなテーブルとパイプ椅子が数脚置かれていた。冷蔵庫やコーヒーメーカーもある。研究員達の休憩室だろうか。

 梨花は冷蔵庫を開け、中に入っていたミネラルウォーターのペットボトルの蓋を開け、一気に飲み干した。そしてもう一本を持って椅子に腰掛けた。

 しばらくは何も考えずにぼんやりしていた。やがて気分が落ち着いてきた。

 あれだけ出血して水分を放出していたのだから喉が渇いて当然だ。腕時計で時間を確認する。進入開始時が午後八時。タイフーンと遭遇したのがそれから約四十分後。そして今は午後十時三十五分だ。二時間意識を失い、その間に傷が完治した…。

 絶対に有り得ない。考えれば混乱するばかりだ。梨花は自分では判断せずに、正確に報告する為に、事実だけを記憶に留めようとした。

 通路から靴音が聞こえた。誰かがこっちに向かっているようだ。この部屋に隠れる場所はない。梨花はトカレフを構え、銃口をドアに向けた。

 ドアノブが回り、ドアがゆっくりと開いた。若い女が顔を出した。そして梨花と目が合った。

 「動かないで」

 梨花はそう言って女を睨み付けた。逃げ出すようであれば撃つつもりでトリガーに指をかける。

 「あ、あの…」

 と女は呟き、驚いた顔で梨花を凝視している。ここの職員は機密保持の為、全員が本社から派遣されている。殆どがアメリカ国籍で、日本語を修得している者は少ないらしい。でもこの女の反応は日本人そのものだ。

 「中に入ってドアを閉めて」

 梨花は女に命令した。女は一瞬ビクッとなったが素直に従った。作業員のツナギを着ているところをみるとただの清掃員か何かだろうと思った。

 が、梨花は椅子を蹴って立ち上がった。女は拳銃を持っていたのだ。

 「それを床に置きなさい」

 梨花は激しい口調で命令した。

 「いや、あの、ちょっとお」

 女はしどろもどろになって手を振り、自分が持っている拳銃を見て『ああ、これですか』と言った。

 「怪我してるんですか?」

 女が訊いた。そしてツカツカと接近してきたので梨花はトカレフの照準を女の肩に合わせた。

 「あのー、あたしは別に怪しい者じゃないですよ」

 と女。

 「どこの誰だって言うの?」

 「今村夏美って言います。小説家です」

 「へー…」

 「あの、昨日ここの人に捕まって、監禁されていたんです」

 「え?」

 「えーっと、ここでやってる研究を調べにきたからだと思いますけど、木場さんが電撃棒でバチバチってやられて」

 「木場?」

 「ジャーナリストの木場誠二さんです。ひょんな事で知り合って、あたしは無理を言ってついてきたんです」

 「その銃は?」

 「保安室にあったんです」

 「そこに置いて」

 と梨花が言うと夏美は銃をテーブルに置いた。

 梨花はトカレフを構えたまま、片手でその拳銃を調べた。ベレッタM84FSだ。銃口から火薬の匂いがしている。ついさっき発砲したようだ。

 「ここの人ですか?」

 と夏美が訊いた。梨花は銃を置き、夏美を見た。

 「知っている事を全部話してもらえる?」

 梨花は夏美に椅子に腰掛けるよう促して言った。

 夏美はパーティ会場で木場と知り合った時の事から、記憶の糸をたぐりつつ話した。梨花はその間に次第に痛みが和らぎ、気分も良くなってきているのを感じていた。

 「と、いうわけなんですけど…」

 と夏美は上目遣いで言った。梨花は驚きが顔に出ないように気を付けた。

 何かが起こっているとは思っていたが、まさかバイオハザードが発生していてゾンビがウヨウヨ徘徊しているとは考えてもみなかった。

 搬入されたであろう資材の分量から、予め施設の規模と性能は予測していた。グレースケミカルはカーサの時代に取り返しの付かないミスを犯し、バイオハザードを発生させている。その過ちを繰り返すはずがない。と思った事が予断であったわけである。

 「…嘘は無いみたいね」

 と梨花は言った。地下四階に行けば事実かどうかなんてすぐに分かる事だ。

 「当たり前ですよ。嘘を言う理由がありません」

 夏美は少し怒ったように言った。梨花は苦笑して、トカレフの引き金から指を外して口を開いた。

 「吉岡梨花」

 「は?」

 「私の名前」

 「はあ。吉岡梨花さん、ですか。リカちゃんですね。あはは」

 「所属は一応陸上自衛隊。超法規的措置でここの潜入捜査を命じられたのよ」

 「ヘー。スパイですか? かっこいいですねえ」

 と夏美は目を輝かせて言った。梨花は呆気にとられて肩をすくめた。

 でも梨花はこの娘の明るさに救いを感じていた。根っから明るいのではなく、そう努めて頑張っている。芯の強い娘なのだな、と梨花は思った。

 梨花は進入経路と、ヒグマの生物兵器であるタイフーンにやられた事を夏美に告げた。あの化け物を倒さない限り来た道は戻れない。

 でもエレベーターは使える。この階と、地下四階と地下一階にしか降りられないようだがタイフーンの居る区域を突破するより遙かにマシだ。

 「射撃は初めてだって言ったわね?」

 梨花は夏美にM84FSを差し出して言った。

 「あ、はい。木場さんの教え方が良かったお陰でどうにか…」

 「これからは私の指示に従って」

 「は?」

 「私には民間人を保護する義務があります。勝手な行動をされると命の保証は出来ません」

 「…そうですよね。梨花さん、プロですもんね」

 夏美は拳銃をポケットに収め、納得したように何度も頷いた。

 本当はそんな義務は無い。それどころか、任務遂行の為には殺人も妥当だと指示されている。夏美にこのように言ったのは利用しやすくする為だ。

 「あの、怪我は大丈夫ですか? 凄い血が廊下に広がってましたけど…」

 夏美が梨花の脇腹を見て心配そうに言った。梨花は傷の具合を確かめて口を開いた。

 「ちょっとショックで気を失っだけど、平気よ」

 梨花は立ち上がって言った。本当に大丈夫なのかと心配になったが、普通に歩くことが出来た。

 梨花は冷蔵庫からミネラルウォーターを二本と、チョコレート取り出して夏美の持っていたバッグに入れた。そしてエレベータールームに向かった。

 「地下七階には行けませんか?」

 エレベーターの中で夏美が訊いた。

 「マリア・クートアって女の子がそこに居るかも知れないって思っているの?」

 梨花は夏美は話の内容を思い出して言った。

 「あっ!」

 「ど、どうしたの?」

 「そうですよお! あたし、そう思っていたんですよお。だから行かなくっちゃって思っていたんですよ」

 「そ、そう。取り敢えず一度地下四階に行って調査してから考えるわ。いい?」

 「はい…」

 夏美は小さな声で、悔しそうな顔で返事をした。

 梨花は、夏美の言う奇妙な研究に興味を覚えていた。生物兵器以外の研究をしているのならばそれも調べたいと思うが脱出ルートの確保を優先すべきだった。

 二人は地下四階でエレベーターを降りた。梨花はまだゾンビが居る保安室の区画以外の場所を隈無く調べ、夏美の証言を確認した。

 でも、データ管理室では夏美が見たという研究内容を映していたモニターは消えていた。梨花はアクセスを試みたが、パスワードが必要で無理だった。

 誰かがこのコンピューターを操作したのだろうか。夏美によると、他に変わった点はないそうだ。

 「あのあのあの、どうなっちゃったんでしょうねえ…」

 と夏美はアクセス出来ないのがまるで自分の責任のように狼狽えた。梨花は夏美を無視してモニターを睨んだ。

 モニターに何かが付着していた。それは二、三ミリの大きさの白っぽい塊だった。ご飯粒が付いているようにも見える。が、モニターのガラスとその物体がくつ付いている部分に微細な隙間がある。つまり、まるでその物体がガラス面にめり込んでいるようなのだ。

 「どうかしました?」

 と夏美が首を傾げている梨花に訊いた。梨花は机の上にあったボールペンでその物体を
突っついてみた。

 ぬるっとしている、と感じた次の瞬間にモニターが『ボンッ』と音を立てて破裂した。梨花は咄嵯に顔を背けて飛んできた細かいガラスの破片を避けた。夏美は『わっ!』と叫んで後ずさった。

 「な、なんですか!?」

 夏美が訊いた。

 「変な物が付いていたのよ…」

 梨花は顔に付いたガラス片をはたき落としながら言った。その後、あの物体を探したけど見つからなかった。

 夏美は梨花に説明を求めた。梨花はモニターにヒビが入っていたのだろうと言ったが、自分でも納得の行かない説明だと思った。

 二人はデータ管理室を出て、地下一階に向かった。その途中、梨花は一連の奇妙な出来事がバイオハザードと関係あるのかと考えたが、結論は出なかった。

 エレベーターを地下一階で降り、長い通路を進んだ。通路は途中で二股になっていた。梨花はそのまま真っ直ぐ進む事にした。

 やがてガレージの様な区画に出た。大きなリフトがあるが、せり上がったままになっている。近くにあった昇降ボタンを押すとリフトが下がってきた。

 二人はリフトに乗って上がった。そこもガレージだった。シャッターは開いていて敷地が望めた。

 不気味だった。動いているものは見えないが、闇に何かが潜んでいる気がする。それを強く感じていたのは夏美の方で、M84FSを取り出し、敷地を見回している。

 梨花は一台だけ停めてある黒いワゴン車に近寄った。中には一見何も無さそうだったが、梨花はトカレフのグリップでドアガラスを割った。

 車内には何も無い。ワゴン車のキーも見当たらなかった。後部ドアを開けて、物を置くスペースの下張りを叩いてみた。

 音の違う箇所があり、下張りの隅は少しめくれていた。剥がすと、木の箱が出てきた。中にはM4A1カービンとマガジンが三つ収まっていた。

 M4A1カービンとは米軍が使用するアサルトライフルである。拳銃に比べて破壊力が高く連射も出来る。しかし、梨花はこれでタイフーンと戦うのは無謀だと思った。

 夏美によると、このワゴン車は昨日の昼間に外人が乗ってきたものらしい。こんな武器を持ち込むという事は、宿舎の誰かが救助を求めたという事だろうが、それはどこだ?

 グレースケミカルが傭兵を雇っていて、短時間で日本国内に人員と武器を搬入するのは無理っぽい。だとしたら残る可能性は一つだけだ。

 「ゲートに向かうわ」

 梨花がM4A1を構えて言った。

 「え? でも木場さんと合流しないと」

 「彼も同じ事を考えているはずよ」

 「あ…」

 「援護するから前を行って。さあ!」

 「は、はい!」

 夏美は梨花に背中を押されてドタドタと走り出した。

 その時、夏美は背後に何かを感じて振り向いた。梨花はその夏美を見て立ち止まった。何だと思って振り返り、四角いガレージの屋根を見た。

 人影がある。それはずんぐりむっくりしていて、がに股だった。

 「あっ!?」

 夏美は、そいつが飛び降りたのを見て声を上げた。

 そいつはノソノソと夏美に近付いて来た。身長は低く、皮膚は腿虫類のようだ。服は着てなくて筋肉が隆起している。顔はトカゲとゴリラを混ぜ合わせたような感じだ。

 「あのお…」

 夏美がそいつに向かって言った。人間ではないだろうと思っていたけど、変なオジサンではないとは言い切れない。

 「ヒドゥンよ! 下がって!」

 M4A1を構えた梨花が夏美に命令した。夏美は『ひっ!』と小さく叫んで屈み込んだ。

 梨花は地下八階で見たファイルを思い出した。近付いて来るのはヒドゥンだ。どうしてこんな所をうろついているのか知らないが、こいつは人を殺す為に造られた生物兵器だ。

 梨花のアサルトライフルが三回連続で火を吹いた。だが、ヒドゥンは梨花が引き金を引く一瞬前に飛び上がっていた。

 ヒドゥンは夏美を飛び越え、梨花の目前に着地した。梨花は咄嵯にM4A1の銃口をヒドゥンに向けた。

 「うっ!?」

 だが、ヒドゥンはM4A1の銃身を振り払った。体勢を崩した梨花はそのままヒドゥンに蹴りを入れた。

 ヒドゥンは少し仰け反ったが、蹴りの反動で倒れた梨花に突進した来た。梨花は再びヒドゥンに向けてM4A1を撃った。

 今度は命中した。が、狙った胸部ではなく肩に当たった。ヒドゥンは小さく『ギャ』と叫んで飛び退いた。

 なんという生き物なのだ。こいつは引き金にかけた指の動きを見て弾を避けている。梨花はパニックに陥らないようライフル弾を当てる事だけを考え、起き上がった。

 「逃げて!」

 梨花はヒドゥンから目を離さずに夏美に言った。

 「で、でも!」

 「言う事を聞きなさい!」

 「ううっ!」

 夏美はどうしようかと迷ったが、梨花が撃ったライフル弾が足元に飛んできたのできびすを返して走り出した。

 梨花は夏美が去ったのを確認した後、M4A1を片手で持って銃口を下げた。ヒドゥンは一瞬飛びかかろうとしたが、首を傾げて後退した。

 「あんた、元は人間なんでしよ? 私の言葉、分かる?」

 梨花はヒドゥンに問い掛けた。ヒドゥンは特に表情も変えずに『グルル』と唸り、梨花に近付き始めた。

 ヒドゥンがM4A1を注視しているのを利用して、梨花はもう一方の手を作業着のポケットに手を入れて、トカレフを握っていた。ヒドゥンはその事も知っているようだ。

 銃を扱う相手にどう対処すればいいのかを教育されているとしたら、コミニュケーションが可能なはずだ。

 そう思い、梨花はヒドゥンの目を見つめた。凶悪な顔からは知性と、何らかの感情が感じられる。しかし、それは好ましいものではなかった。冷酷さと、殺しの本能と喜びを察知した梨花は嫌悪感を覚えた。

 でもタイフーンより数倍マシな相手だ。梨花はヒドゥンの動きを捉えようと神経を研ぎ澄ました。



続く

にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ 小説家へ
にほんブログ村

にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
関連記事
このエントリーのタグ: 武澤信幸 連載小説 SF小説
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す