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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

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※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

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【DD5】 今村夏美

 夏美は頭をポリポリと掻いて椅子から立ち上がった。木場が『ここに居ろ』と言って出て行ってからもう三十分ぐらい経つ。何かあったのだろうか。

 いつまでここで待てばいいのだろう。すぐ外の通路には保安室から運び出したゾンビの死体が三体もある。

 「ゾンビの死体…」

 と夏美は呟いた。変な表現だ。正確には感染者の死体だわ、と定義をし直す。

 そんな事より『思わないようにしよう』と思えば思うほど動くゾンビの姿を思い出してしまってなんとも嫌な気分になる。

 この保安室には連絡用の内線電話があるから絶対に出るな、と木場に言われている。だったらゾンビの死体をもっと遠くに移してくれたら良かったのにと思うが後の祭りであった。

 暇つぶしに木場から渡された拳銃をいじってみた。木場は小型で扱いやすいはずだ、なんて言っていたが、夏美にとっては大きくて重い。安全装置を外してスライドを引いて、引き金を引けば弾が出るらしい。

 電撃棒もやっぱり重い。グリップに付いているボタンを押せば先端の二本の針から青い火花が出る。バッテリー内蔵式だから何度も使えないと言われたがその理由はよく分からない。

 夏美はまた椅子に腰掛けて溜息を吐いた。ここに居ても仕方がない気がする。でもこの区画の外に出てゾンビが居たらどうしよう? きっと噛み殺されてしまうだろう。

 それにしても木場の行動は凄かった。ゾンビだと言っても元は人間だ。と言うより、変な動きをする顔色の悪い人間にしか見えない。なのに少しのためらいもなく撃ち殺した。もしかしたら木場は冷酷非情な人殺しなのではないかと思えてくる。

 いやいやそんなはずはない。彼はあたしを守ろうとしてくれている。カーサの研究所とかで同じ様な場面に遭遇していて対処の方法を知っているからそうしたのだ、と夏美は思い直した。

 帰ったら大変な事になるだろう。警察で事情を説明して、その後はマスコミに出演するのだ。あ、この事を書けば売れるかも? 有名になったら小説執筆の依頼がいっぱい来るかも知れない。

 「えへへ」

 と夏美は売れっ子になった自分の未来を想像して笑った。その時、妙な感覚に襲われた。一瞬床が傾き、重苦しくなった。ヴーンという音も聞こえた。

 その感覚と音は下からした。夏美はそう感じていた。何かが下の方から来て、通り過ぎたように思える。

 胸騒ぎがして夏美は立ち上がった。そして何気なくドアに付いている小窓から通路を見た。

 視界の隅で何かが動いている。何だろ、と思ったが気のせいにする事にした。何も動いてなんかない。動いているはずがない。

 嫌だなあ、と思いつつ視線を下ろした。夏美は動いているものが何であるか知って『うっ』と声を出した。

 それは通路で横たわっているゾンビの指だった。まるで蛆虫のようにウネウネと指だけがのたうっている。

 木場は『頸椎を破壊すればもう動かない』と言ったが、その情報は間違っていたようだ。三体のゾンビが一斉に、しかも元気よく立ち上がったのだ。

 「うわおっ!」

 と夏美は叫び、ピョンと飛び跳ねた。身体はガクガクと震え、心臓が口から出そうだ。

 一体のゾンビが口をあんぐりと開け、小窓に顔を密着させた。剥落した皮膚がガラスにくっ付き、口から出た赤黒い液体が小窓を染めてゆく。こんな恐いものは生まれてこのかた見た事がない。

 でもドアは閉まっている。中に入って来れない以上危険はない。と思ってホッとしたらドアがスライドして開いた。

 木場は『ドアを閉め切っていれば大丈夫だ』と言ったがそれも間違っていた。偶然だろうが、ゾンビが通路側の開閉スイッチを押したらしい。

 夏美は机の向こうに回り、電撃棒と拳銃を両手に持った。

 ゾンビ三体は夏美めがけてドッと押し寄せた。夏美は机を盾にして部屋の隅に移動した。つられて動いたゾンビと一方の壁の間に空間が出来た。

 「えいっ!」

 夏美は机を思いっきり押し、更にゾンビを押しやってドアに向かって走った。咄嗟の事だったがこのやり方は功を奏し、どうにか通路に出る事が出来た。

 他の安全な部屋に逃げ込めばいい。夏美はそう考えた。監禁されていた部屋は鍵が壊れているので駄目だ。荷物が置いてあった部屋なら大丈夫だろう。

 その部屋のドアを開けた夏美は『ひゃっ!』と叫んで仰け反った。

 壁際にゾンビがのそっと立っているではないか。ボロボロの服を着ていて、足元には土くれが散乱している。いま墓場から這い出てきたような感じだ。

 ゾンビが増えているって事は、どこかから入ってきたという事だ。木場が通っただろうカードキー式のドアが開いているのかも知れない。

 再び通路を走る。だが、ドアは閉まっていた。夏美は狼狽えた。他にここに通じる進入口があるとは思えない。

 だったらどうしてゾンビが増えるのか、どうして頸椎を破壊されているのに蘇るのか? などと疑問が頭をよぎったが、ボヤボヤしている場合ではなかった。

 保安室と物置から計四体のゾンビが通路に出てきたのである。『落ち着け落ち着け』と呪文のように唱えながら、夏美は電撃棒を構えた。

 グリップのボタンを押してみる。バチバチと火花が出た。これで撃退出来るのかと思った時、一体のゾンビが突っ込んできた。

 「わあっ!」

 夏美はゾンビの胸元に電撃棒の先端をあてた。ゾンビは『ぐおっ』と呻いてヨロヨロと後ずさった。でも、それだけだった。

 木場がやったように拳銃を撃とうとしたが、引き金が固くて引けない。これではもう、後は噛み殺されるだけだ。

 「ぐおおおっ!」

 額に穴の開いたゾンビが怖ろしい声で叫んだ。穴からは灰色の脳髄が見える。これは人間ではない。化け物だ。ゾンビだ。あ、ゾンビだった。

 夏美はパニックに陥り、持っている拳銃を投げつけようとした。

 その時、背後にあるカードキー式のドアから『ピー』という音がしてロックが外れた。夏美はくるりと振り向き、ドアを開けた。

 外に出て、急いで開閉ボタンを押し、ドアを閉める。間一髪で迫ってきたゾンビ共を保安室の区画に閉じ込める事に成功した。

 「ふーっ…」

 夏美は恐怖と安堵の入り交じった息を吐いた。これでゾンビに襲われる事はない。安全だ、安全なんだとまだ足腰がふらついている自分に言い聞かせる。

 でも一体誰がドアロックを解除したのだろう? 近くには人影は無いが…。

 「ん?」

 通路の奥に誰かがしゃがんでいるのが分かった。木場ではなそさうだけど、助けに来てくれた人だと思って近寄ったが違った。

 そいつもゾンビだった。拳銃で撃たれたのだろう、額が砕けて顔面血だらけだ。

 夏美は逃げ場を探してウロウロと歩いた。他にも二体のゾンビがぼーっとして立っているのが見えた。ゾンビの居ない方へと進むと両開きのドアがあったが、そこにもゾンビが居る。

 少し引き返した所にもドアがあった。監禁されていた部屋のと同じ様なドアノブを回してみる。

 鍵は掛かっていなかった。ドアをゆっくり開ける。四組のベッドとロッカーが見える。どうやら仮眠室のようだ。

 幸いな事にゾンビは居ない。夏美は部屋に入ってドアを閉めた。

 ベッドに腰掛けて、考えなければならない事を考えようとしたけど頭が全然回らない。自分で思っている以上に動揺しているようだ。

 「えーっと…。まず、ここは安全である。それで、助けが来るまで閉じこもっていればいい…」

 と、夏美は考えを口に出してみた。そして首を振った。自分の考えは間違っている。

 今まで待っていて良かった事があったか? いつか自分は有名になってお金持ちになるのだと思っていたけど、実際に世に出れたのは稚拙ながらも小説を書いたからだ。勇気を持って投稿したからだ。動かなければ何も始まらないと知ったのではなかったか。

 まだ待とうとする自分をどうにかしたい、その思いから木場に近付いた。大人の男で、颯爽としていて、独りで生きている感じがしたからだ。そして今ここに居る。ならばジッとしていてはいけない。

 夏美はロッカーの中を物色した。作業員用のツナギがあった。他のロッカーの中にカードキーも見つけた。カードには『Data management room』と書かれている。英語の苦手な夏美でも『データ管理室』だと分かった。

 これからしようとしている事を考えればスカートを履いているのはよくない。夏美はスカートを脱ぎ、ツナギに着替えた。ポケットは胸と腰と足の部分にそれぞれ二つある。夏美は拳銃を足のポケットに入れて電撃棒を持った。

 ドキドキしている。手のひらに汗もかいている。ドアを開けて通路に出る。データ管理室に入れても状況が変わる保証はないけど、他に何も思い付かない。

 夏美は通路を進んだ。データ管理室のドアの前には一体のゾンビがしゃがんでいる。夏美は電撃棒を槍のように構えて突っ込んだ。

 それに気付き、立ち上がったゾンビは電撃棒の先端を喉に喰らい、大きく仰け反った。

 「えいっ! えいっ!」

 夏美は何度も何度もゾンビを攻撃した。その度にゾンビは『ぐえっ』と声を出し、最後には転倒した。

 夏美はデータ管理室のカードキーを取り出し、ロックを解除した。その間、凄く長い時間に思えたが、実際は五秒も経過していなかった。

 データ管理室はその名の通りコンピューターがいっぱい並べられていた。でも全て市販されているパソコンだった。SF映画に出てくるような大きなスクリーンとか、光るボタンがいっぱい付いてるパネルなどはない。

 パソコンの他に見慣れない機材が幾つかある。インターネットの会社にあるような機材だ。でも、どれがどんな働きをしているのかさっぱり分からない。

 殆どのモニター画面は真っ黒だ。その中の二つだけが何かを映し出していた。

 一つはこの施設のマップらしき図面だ。保安室にもあったが、まさか自分が使うとは思っていなかったので全然覚えていない。プリントアウト出来ないかとマウスを使ってあれこれやったが、時間が経つばかりだ。なので床に散乱しているコピー用紙に描き写そうとした。

 「あ…?」

 コピー用紙の下に赤い箱があった。中には弾丸が入ってる。誰かが落としでもしたのだろうか、M84FSのマガジンに入ってるのと同じだ。夏美は『出来るかなあ』と思いつつ、木場に教わった手順を思い出して弾丸を装填してみた。すると、どうにか出来た。なんか嬉しい。

 もう一つの画面には研究レポートのような文章が出ている。夏美は、どうせ読めないからと無視しようとした。

 でも、何故か気になる。マウスでページがめくれるようになっていたのでやってみた。

 小難しい文章がいっぱい出てきた。それが何ページも続き、読めないからもうやめようと思った時に写真が現れた。

 それは白人の少女の写真だった。どこかの海岸の岩の上に腰掛けて微笑んでいる。長い金髪が風になびいていて、夏美はいい写真だと思った。

 「マリア…、クートア…?」

 夏美は写真の下の文字を読んだ。年齢は十四、性別は女性とある。研究者の家族の写真だろうか。

 しかし、次のページを見て夏美は眉間に皺を寄せた。ベッドに横たわり、鼻に酸素吸入用の管を入れ、点滴を受けている少女の静止画像が出てきたのだ。

 それから数式や機械の設計図のようなものや、部品の画像などが延々と現れた。そして目を閉じた少女にヘルメットのようなものを被せ、全身にコードや管を取り付けた画像を最後にレポートは終わっていた。

 「うーん…」

 と夏美は唸った。これは重要な情報のような気がする。

 読める箇所がないかとページをめくった。『生体波動』『情報とエネルギーの変換』『脳活動のホログラフィック化』『発電、蓄電装置の概要』などの言葉が読み取れたが、これが何の研究を意味するのかはさっぱり分からなかった。ただ、地下七階に研究室があるのは分かった。このマリア・クートアという少女は今もそこに居るのだろうか。

 自分とは関わりのないものだと思う。いずれここで起こった事が世間に知られれば、この研究内容も分かるだろう。でも、心の底から突き上げてくるような思いを強く感じている。

 この研究を調べたい。いや、ここに行きたいと思っている。夏美はこの気持ちに戸惑った。今は木場の後を追って一刻も早くゾンビだらけの施設から脱出するべきである。

 夏美は大きく深呼吸してから電撃棒のボタンを押してみた。もう火花は出ない。次に拳銃を取り出して構えてみた。さっき引き金が引けなかったのは安全装置を外していなかったからだと分かった。

 映画などで拳銃を横にして撃つシーンがあるけど重くて無理だった。右手で構えてグリップに左手を添えれば一応サマにはなるかなと思う。

 「ふう…。行きますか…」

 夏美はそう呟いてドアの前に立った。不思議に落ち着いている。神やオカルトの類いは信じていないが、何かが自分を動かしているような気がしている。

 ドアを開けると、通路に居たゾンビ三体がドッとなだれ込むように襲ってきた。夏美は後退しながらゾンビの顔面に弾丸を撃ち込んだ。

 夏美は、木場が表情一つ変えずにゾンビを倒していった場面を思い出した。あれは冷静で、的確であろうと努めて初めて出来る行為だ。今、自分はどんな顔をしているのかとふと思った。

 引き金を引いても弾が出なくなった。ゾンビは全て床にうつ伏せになって倒れている。自分が倒したのだと思うと身体が震えてきた。

 夏美は拳銃のマガジンを取り替えた。床に倒れたゾンビの脇をすり抜け、早足で通路を行く。

 両開きのドアの前に居たゾンビもどうにか倒した。ドアを開けるとそこはエレベータールームだった。

 階層ボタンは明るく光っているのと暗いのがある。この階とB1FとB8Fは明るく、他は暗い。多分明るい階で降りられるという事なのだろう。

 夏美はB1Fを押そうとした。地上へ近付く程脱出のチャンスが増えそうな気がする。

 「んー…」

 少しの間ためらい、B8Fを押した。マリアが居るのは、居るとしたら地下七階だ。少しでも近付いた方がいいと思ったのだ。

 これでいいのかという気持ちはあるが、他に自分を支配している感覚がある。

 昔、まだ小学生だった頃に子犬を拾って帰った事がある。親には捨ててこいと叱られたけど、夏美は頑として譲らなかった。この時、子犬が可愛いからとか、可哀想だと思う以上に自分が育てなければならない、という使命感があったのだ。

 でも、どうして今こんな気持ちになるのだろう。夏美は自分の動機を探ったが、エレベーターが停まっても明確な理由にはたどり着けなかった。



続く

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17: by sado jo on 2017/01/01 at 12:23:20 (コメント編集)

あけましておめでとうございます♪
ゾンビもなかなかいいですね~…思えば、全ての生き物に天敵がいるのに人間には天敵がいません。
実はこれは自然の摂理に反しており大変困った事です…やはり、人間にも天敵になる存在が必要かと。
そうでないと、同族を天敵代わりにして食い合ってしまいます…それが世界の現状。
ともあれ、今年もどうぞよろしくお願いいたします^^

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