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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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【DD3】 木場誠二 今村夏美

 木場は夏美から借りたヘアピンでドアロックを解除しようと、片膝をついた姿勢で奮闘していた。鍵を開けた所で見張りが居ればすぐに捕まるだろうが、じっとしているよりは精神的にいい。

 ドアは普通のマンションに見られるような一般的なものだ。構造は単純なのだが作業は進まない。こんな時にキーピックがあれば楽勝なのだが、生憎持ってきたものは全て没収されてしまっていた。

 「ぬう…」

 木場は苛立ち、呻いた。物事に集中すると時間を忘れる癖がある。壁の上方にある時計を見るともう四十分が経過していた。木場は一旦休憩しようと立ち上がった。

 折り畳み式のパイプ椅子に腰掛けた夏美と目が合った。不安そうな顔をしている。木場はテーブルを挟んだ位置にあるパイプ椅子にドカッと座った。

 部屋の広さは六畳ぐらいだ。テーブルと椅子が二つとボードで仕切られたトイレのスペースがある。

 この部屋に入れられる前、目隠しをされたままどこかで待たされていた。元は職員の休憩室か何かだったのだろう。置かれていた物品はどこかに運び出され、監禁室に作り替えられたのだと木場は推測していた。

 「あの、背中はまだ痛みます…?」

 夏美が訊いた。木場は少し背中を動かした。

 「もう大丈夫だ」

 木場は夏美を不安にさせないよう、なるべく平静な顔を装って言った。

 この部屋に監禁されてからもう一日以上経過している。その間、外で何人もの人間が走ったり、わめいたりしていたが今は静まり返っている。最初に飲料水とサンドイッチが与えられただけで、それ以来誰もこの部屋を訪れていない。

 ここは大きな区画をボードで仕切っただけの部屋らしい。エレベーターに乗せられた時、降りた感覚があったので地下だとは思う。

 それにしてもグレースケミカルに傭兵が居たのには驚いた。しかも昼間でも使用可能な動体赤外線グラスをかけていた。あれはつい最近アメリカ陸軍の特殊部隊で採用されたばかりのものだ。軍とどこでどう繋がっているのか知らないが、非常にやばい事になっているのは確かだ。

 今は処置に困って監禁しているのだろうが、いずれ本国に連行するか、ここで処理するかのどちらかになるはずだ。アメリカは人権や環境保護にやかましいと思われている国だが、国益を損なうような事だけは地球を滅ぼしても絶対にやらない。

 「すまなかったな…」

 木場は夏美にそう言った。

 「あたしが勝手についてきたんですから…」

 夏美は、微笑もうと努めて言った。

 「そう言えば、まだあまり説明していなかったな。自分には、君をこんな風に巻き込んだ責任がある。だから」

 「お堅いですねえ。普段からそんな風なんですか?」

 との夏美の質問に、木場は『あー、うー』などと呟き、頭を掻いた。

 夏美は木場に打ち解けろ、と言ってるのだ。それは一理あるな、と木場は考えた。これから先どうなるか分からないが、個人の間に壁があると意思の疎通がはかどらない。このような状況では『協力』は不可欠だ。

 「分かった。もう少し気を抜こう。こんな事態になると、昔の癖が出てしまうんだ」

 「昔の癖?」

 「イスラエルで軍事訓練を受けた事があってな。雑誌で『現代の最新兵器』つて特集を組む事になって、取材に行ってそのまま半年お世話してもらった。より良い内容にするには自分も訓練を受けた方がいいって言ったらOKしてくれたんだ」

 勿論、ルポライターとして名が通っていたからであるし、イスラエルの国家情報部であるモサドが他国の情報源として木場を活用しようとしたからでもある。今でも時折『ここは面白そうだぜ。調べてみてはどうだ?』などと言って来る。グレースケミカルとカーサの関係を示唆したのも連中だった。だからと言って、言いなりになるつもりはない。あくまでギブアンドテイクの関係だ。

 「さて、もう丸一日ここに閉じ込められているけわけだ。誰も来ないし、ドアの鍵は開きそうにない。そこで、暴れる事にする」

 と木場は言い、ドアに歩み寄った。

 「あ、あの、暴れるって?」

 「じっとしていてラチがあかないんなら、騒ぎを起こせばいいって事さ」

 木場はドアを蹴った。夏美はびっくりした顔をしている。

 三度目でドアの真ん中にヒビが入った。木場は蹴るのを止めて今度は体当たりをした。

 蝶番が外れ、ドアは外側に大きな音を立てて倒れた。木場は通路に出てみた。やはり誰も居ないし、来そうな気配すらなかった。

 通路を出て左側にはここと同じ様なドアがある。右手の奥には頑丈そうな両開きの扉がある。調べてみるとカードキー式でロックされていた。

 「木場さん、これ…」

 通路に出た夏美が床を指差し、何かを凝視して言った。

 「血だな…」

 木場は夏美が示した床を調べた。床に血が点々と滴っている。

 血はカードキー式のドアと、隣りの部屋のドアに続いていた。そのドアも監禁されていた部屋と同じだった。

 木場はドアを蹴り破った。その部屋は椅子やテーブルや段ボール箱が雑然と積み上げられていた。モップやワックスなどの掃除器具もある。

 部屋の隅にバッグが置いてあった。それは木場のものだった。中にはナイフやカメラや携帯食料など、持ってきたものが収まっていた。が、携帯電話は滅茶苦茶に壊されていた。

 他には特に何も無さそうだ。木場はバッグを担いで部屋から出た。

 血の痕はカードキー式のドアにも続いている。この部屋は、他のボードで仕切られた部屋と違ってコンクリート製の壁で囲われている。恐らく、ここだけが正規の目的で作られていて、他は必要に応じて増設されたのだろう。

 ドアはロックされていない。木場は開閉ボタンを押してみた。

 「お!?」

 木場は部屋の中を見て驚いた。人間が三人倒れている。腹や胸を撃たれているのが二人、もう一人は首が裂けていた。前者は白衣を着ていて、後者は軍服のような服を着ている。

 「な、なんです? こ、これ…?」

 夏美が部屋を覗き込み、目を見開いて言った。

 木場は夏美には刺激的だと思ったが、構っている場合ではなかった。この部屋は保安室のようで、壁には空のキーボックスがあり、事務机の上にはコンピュータのモニター端末と電話がある。ロッカーは全て開け放たれている。

 電話は内線専用のようだ。木場は受話器を取ってボタンを押してみた。

 呼び出し音が聞こえる。が、いつまで経っても誰も出ない。他のボタンを押してみたが無駄だった。

 見慣れないステンレス製の箱が壁際に設置されている。大きさはコンビニにあるアイスクリームボックスぐらいだ。箱からは四本の太いパイプが伸びている。箱には操作盤のようなものもある。

 木場は箱の蓋を開けた。オゾンの匂いが充満している。中には黄緑色のカプセルが幾つも入っていた。カプセルをセットするような蓋付きの窪みもある。

 カプセルを開けてみた。入っていたのはベレッタM84FSだった。マガジンは空だ。なんでこんなカプセルに拳銃が入っているのだろう、と訝った木場は操作盤を調べて納得した。

 これはエアシューターだ。エアシューターとは空気圧でカプセルを他の場所に運ぶ装置の事だ。昔、病院で処方箋や薬を運ぶのに使っていたのを見た事がある。

 操作盤には1F、B2F、B4F、B6Fと記されたスイッチが並んでいる。それぞれのスイッチには1から4の小さなスイッチがある。小さなスイッチはカプセルの番号のようだ。

 このカプセルに物品を入れておけば任意の場所に送る事も、そしてここに戻す事も出来るようだ。拳銃が入っていたのは、どこかに送るよう要請されたか、それとも送るように頼んだかのどちらかだろう。

 首の裂けた死体は拳銃を握っている。木場はそっとその拳銃を取り上げた。

 それはクーガーM8000だった。M84FSと同じくらいの大きさの拳銃だ。木場はマガジンを抜いてみた。まだ十発ぐらい弾丸が残っている。

 クーガーもM84FSも。拳銃の弾やサブマシンガンの弾としてもっとも広く使用されている9ミリパラベラムを使用する。殺傷力は低いが貫通力は高い。木場はロッカーの中にマガジン二つと、弾丸が三十発収まった赤い箱を発見した。

 木場はクーガーをベルトに差し込んだ。M84FSは事務机に置いた。そしてマガジンと箱をポケットに入れて死体を観察した。

 撃たれた方の死体の皮膚は真っ白で、乾燥していて、所々剥落している。目も白く濁っている。

 他にもIDカードとカードキーを見つけた。カードキーには『B4F通路』と記されていた。

 木場は壁をコンコンと叩いてみた。相当な厚みがありそうだ。多分、他の細菌やウイルスを扱う研究所と同じように真空の層が設けられているのだろう。ドアも同じだ。ここで発砲してもその音が聞こえなかった理由はこれだ。

 事務机の上には木場を気絶させた電撃棒と、肩に掛けられるようになっているバッテリーパックが置いてあった。先端が二股に別れて針のような突起があり、手元のグリップにはボタン式のスイッチがある。

 「あのあの、何でこの人達、死んでるんですか?」

 青ざめた顔の夏美が訊いた。

 「バイオハザードが発生したんだと思う。ウイルスが漏れて人に感染したようだ」

 「本当ですか? 空気感染だったら」

 「飛沫感染、だと思うが…。うーむ…」

 木場は唸った。死体の症状はZウイルスの感染を示している。いわゆるゾンビ化だ。映画やTVドラマに出て来るゾンビに似ているのでそう呼んでいるが、本当はウイルスが肉体の組織、組成を作り替えた『感染者』なのである。

 感染して発症すると心肺機能が停止する。感染者が死んでもウイルスによる肉体改造は進み、ゾンビになる。心肺機能は低いレベルで回復し、増殖の為に他の脊椎動物に接近して体液を送り込む。Zウイルスは侵入した生物の食欲、捕食本能を増大させる性質があり、その為に『ゾンビ』のようになる。

 木場はコンピュータの操作を試みた。まず、セキュリティファイルを開こうとした。が、IDの入力を求められた。木場は軍服を着た死体から入手したIDナンバーを入れた。

 モニターにマップが映し出された。ここは地下四階の保安室だった。この階にはデータ保管室とウイルス保管室がある。それぞれのドアはロックされているようだ。

 マップの上部には第三種バイオハザード警報の文字が出ていた。やはりウイルスが漏れ、職員が感染したのは間違いなさそうだった。

 しかし、肝心のウイルス保管室に異常は認められない。木場は他の階のマップも出してみた。

 地上施設は普通の建物だが、地下八階まである施設は全て厳重なウイルス流出防止措置がとられている。もし被害が生じていたとしても限られた区画だと思える。

 なのにゾンビ化した研究員は撃たれている。これはどういう事なのか? 早期に対処すれば、こんな事態を招くはずがないではないか。

 木場はバッグから手帳を出して施設のマップを書き込んだ。その際、バイオハザード警報が発令されている時は、エレベーターは各々の階のエレベータールーム用のカードキーがないと使えない事が分かった。

 「あのあのあのあの!」

 夏美が叫んだ。モニターに見入っていた木場は何事かと振り向いた。

 白衣を着た死体はさっきまで全く動かず、息もしていなかったのに、ヒクヒクと動いている。

 「下がって!」

 木場は夏美を自分の後ろに位置させた。死体の腕や足が勝手に動いている。まるで身体の中に別の何かが居るようだ。

 そして死体の手足に統一性が見られるようになった。死体はのっそりと起き上がり、両腕を前に伸ばした。

 木場はベルトに挟んであったクーガーを構え、上部をスライドさせた。最早ゾンビとしか言い様のない感染者の眉間を撃ち抜いた。血しぶきが飛び散り、夏美は『ひゃあ!』と飛び上がって悲鳴を上げた。

 だが、ゾンビは仰け反っただけだ。眉間に開いた穴からどす黒い血が流れ出しているが動きを止める様子はない。どうやら脳が弱点では無いようだ。

 二発目は鼻に撃った。三発目は喉仏だ。そうしてやっとゾンビは腕を降ろし、うつ伏せになって倒れた。頸椎の破壊が有効なようだ。

 「こここここ、殺したんですかあ?!」

 夏美が訊いた。

 「こいつは元々死んでる」

 「で、でも」

 「Zじゃないのか…」

 「は?」

 「今村君」

 木場は夏美をそう呼んだ。

 「はい!」

 夏美は背筋を伸ばして返事をした。

 「これから拳銃の扱い方を教える。一度で覚えてくれ」

 「ええ?!」

 と驚く夏美に構わず、木場は事務机に置いてあったM84FSを持たせて説明に入った。夏美は訳が分からないまま、真剣に説明を聞いて弾丸発射までのプロセスを頭に入れようと頑張った。

 「それと、これも持っていろ」

 木場は夏美に電撃棒を手渡して言った。

 「は、はい。でも、これからどうするんですか?」

 「君はここに居ろ」

 「は?」

 「よく聞くんだ。カラカルシティで起こった事と同じ事が起こっている。ウイルスが漏れて感染した人間がゾンビ化しているんだ」

 「そう、みたいですね…」

 「ゾンビは人を襲って噛み付く。そしてそのまま食べ始める。襲われた人間は短時間でゾンビ化してしまう。こいつらはそうやって増えてゆくんだ。知性も理性も失って本能で、食欲で動く。だが、ここに居て、ドアを閉め切っていれば大丈夫だ」

 「あ、でも、あたし達は感染していないんですか?」

 「空気感染はしないと思うが、油断は出来ないな。とにかく、俺はこれから外を調べる。何か分かったらすぐ戻ってる。いいな?」

 「は、はい」

 木場はバッグを持って部屋を出ようとした。が、再びクーガーを取り出した。

 さっき撃った以外のゾンビと、軍服を着た死体の頚椎に銃口を当ててトリガーを引く。夏美はびっくりして目をそむけた。

 「こうしておけばもう動かない」

 木場はそう言うと、ゾンビを通路に運び出し夏美を残して保安室のドアを閉めた。通路奥の両開きのドアのロックを死体から入手したカードキーで解除し、外に出た。



続く

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