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Nobuyuki Takezawa

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大和川ダンボール国

大和川ダンボール国

【大和川ダンボール国 本文抜粋】

 僕はバッテリー室の前で置いてきぼりにされた。仕方が無いので通路を歩く。すると薄い紫色のツヤ有りのダンボールハウスがあった。ドアにペンキで『医務室』と書かれている。僕はドアをノックして中に入った。

 病院のベッドみたいなのが二つある。また白衣を着て、聴診器を首から掛けた若い女性がパイプ椅子に腰掛けていた。ベッドには人が寝ているようだ。

 「あの…」

 と僕はその女性に声を掛けた。

 「どなた?」

 と女性は言った。なかなかチャーミングで、それでいて知的な雰囲気のある女性である。

 「金田翔太と言います」

 「私は医者だ」

 「それは見た目でわかります」

 「『医者』は名前だ」

 「はあ?」

 「何か用?」

 「ここは、病院?」

 「ドアに『医務室』と書いてあるように、そう病院だ。そっちの方が良かったな」

 「何をしてるんです?」

 「患者の容態を診ている」

 僕はベッドを見た。若い女の子が苦しそうに眠っている。顔もシーツから出た腕も赤い。相当熱があるようだ。

 「風邪ですか?」

 と僕。

 「いや、免疫力が付く最初の段階」

 「はあ?」

 「ここの生き物を食べるとこうなる場合がある。絶対に火を通して食べるから寄生虫や細菌にはやられないけど身体が吃驚するのだろう。私もそうだった。で、その熱を下げていいのかよくないのか診ているところだ。体温が三十九度を超えると解熱剤を打つ。下痢をするようなら点滴をする」

 「へー…。ここの生き物って何ですか?」

 「君は綱木君に助けられた新人君だね」

 「はあ。え? 新人?」

 「ここに住むんじゃないのか?」

 「えーっと、どうかなあ…」

 「煮え切らない奴だ」

 「すみません」

 「用が無いなら出て行ってくれ」

 「分かりました」

 僕はすごすごと退散した。どうも女性に強く言われると言う事を聞いてしまう癖があるようだ。僕はまた通路を進んだ。

 カーキ色のツヤ無しのダンボールハウスが見えた。ダンボールハウスが三つ連なっている。船のコンテナにそのまま積み込める特大の長方体タイプで、ドアには『調達食堂』と書いてある。

 ドアをノックした。返事が無い。勝手に中に入った。天井には学者のダンボールハウスのと同じLEDライトが二つ取り付けてあった。長いテーブルが二つと椅子が沢山ある。全部拾ってきた物だろう。修理の跡がある。誰も居ないので一旦外に出た。

 大和川を見ていたら『バシャ!』と水音がした。そして男が二人、川から上がってきた。一人は綱木さんだ。トランクスを一枚履いているだけだ。もう一人は海水パンツ一丁の痩せた背の高い男だ。二人とも網や網籠を持っている。中には大量の巨大ザリガニや亀や、全長七十センチメートルはあろうかという鯉や、これまた大きい鮒も何匹か入っている。

 「おう、金田君。こんな所まで来てたんか」

 と綱木さんが言った。

 「金田君? ああ、さっき言ってた」

 と海水パンツを履いた男性が言った。歳は僕と同じ位か。

 「金田翔太です」

 「調達だ。宜しく」

 「調達?」

 「そ。それが名前」

 「はあ」

 「これから料理するけど手伝うか? 見てない場所があれば先にそっちに行ってもいいし」

 「あのー、私は新人なんですか?」

 「違うのか?」

 と調達さん。すると何処かに行こうとしていた綱木さんが口を開いた。

 「死ぬつもりで来て、川に身を投げて、帰る場所も無い。新人以外の何者でもないと思うけど?」

 「そうですねえ…」

 「別に引き止めたりせえへん。行く所があるんなら行けばええ。ここに留まりたかったら俺が世話をする。そう言う事や」

 「…当分の間お世話になりたいです」

 「じゃ新人やな」

 と言って綱木さんは行ってしまった。

 「それでは、始めようか」

 と調達さんが言った。



大和川ダンボール国

何もかも無くしたとき、本当に必要なものが見えてくる。
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