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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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桜の道

桜の道 

【桜の道 本文抜粋】

 私が咲くと、玉串川もそうだが、私に沿った歩道がまるで桜のトンネルのようになる時がある。そんな時、決まって北山本辺りで着物を着た少女が父親と現れる。そして写真を撮る。

 最初は少女が三つの時だった。この時は母親がいた。少女は母親に抱かれていた。父親が三脚を立ててその上にカメラを設置する。そしてタイマーをセットして、慌てて二人の所へ戻る。タイマーが働き、桜のトンネルの中に親娘三人の幸せそうな姿が映る。

 それから四年間、同じ事が、同じ場所、同じ時刻に行われた。しかし、少女が小学二年生になった次の年からは行われなくなった。

 再び写真を撮るようになったのはそれから三年後だった。少女はおめかしし、父親は照れたような笑みを浮かべる。桜のトンネルの中で、少女は微笑む。でも私には彼らの悲しみが伝わってきた。大切な人を亡くしたのだ。

 次の年も同じ日に、父娘は写真を撮った。少女は成長して行く。父親は老いて行く。

 次の年、少女はセーラー服を着ていた。父親の髪の毛が、白っぽくなってきた。

 次の年も次の年も同じ場所で、同じポーズで、写真を撮った。きっと連続して写真を見ると、成長する娘の様子がよく分かるに違いない。

 最後のが、娘が着物を着て撮った写真だ。自分一人で。着物は晴れ着とかいうものだ。桜のトンネルの中、少女は、もう少女でなくなっていた。少女は大人の女になっていた。

 「この感情はなんなのだろう」

 と私は考えた。

 「やあ、人間にご執心の君。何か考え事かい?」

 『僕』が現れて言った。

 「うむ。非常に綺麗な絵がある。見て欲しい」

 「いいよ。ほう。人の親子の絵だね。毎年娘は成長し、父親は年老いて行く。人生の摂理だねえ。おや? 母親が途中で亡くなっているね。最後は父親も死んでいる」

 「『死』、とは何だと思う?」

 「生命体が活動を停止する事、でしょ」

 「事象的にはそうだが、彼女はその度に絵を描いた」

 「まさか!? 時空に何かを刻んだって言うのかい?」

 「見てごらん」

 私は特定の場所の時間を遡行させた。

 「…本当だ。この娘の母親が刻まれている。父親もだ」

 「私が描く絵はただの絵だ。でもこれは何かが違う。何か、どう言えばいいのか…」

 「感情?」

 「そう。感情が絵と共に刻まれている。悲しく、辛く、それでいて暖かい感情が」

 「ん? 他にも何かあるみたいだよ」

 「…これは、迷い、諦め、決意もある」

 「人間ってのは、感情の生き物なんだね」

 「そうなんだろうね。感情が彼らを突き動かしているようにも見える」

 「おっと、早まった解釈は危険だよ」

 「そうだな。しかし、私には彼らから多くの事を学んだ気がする」

 「君は本当に人間が好きなんだな」

 「多分。具体的にどこがどうとはまだ言えないが」

 「いつか分かる日が来ると思うよ」

 「本当かい?」

 「テキトー。さあ、もう僕たちの花びらの大半は落ちてしまった。僕は風を感じながら眠るよ」

 「私はもう少しあの少女の絵を見てから」

 「じゃ、またね」

 「ああ、また…」



桜の道


家の近所の桜が毎年咲くので、お話にしました。

意識って、何なんでしょうねえ?


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