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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

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回路師

回路師

【回路師・冒頭文】

 「われ! 誰に断って商売しとんねん!」

 と若いヤクザにいきなり怒鳴られた。白い背広に紫のシャツに高級そうなネクタイにエナメルの靴。頭はリーゼントだ。背が高くて肩幅は広い。なかなかガタイは良さそうだ。

 僕は笑いそうになった。まるでバブル時代のヤクザだ。それに、いきなり来てテーブルを蹴って啖呵を切るなんて最近の映画でも見ないやり口だ。

 「…君、名前は?」

 と僕は訊いた。

 「な、なにぃ? このガキゃ偉そうに言いやがってー」

 とヤクザが憤慨した。僕は襟首を乱暴に掴まれたけど抵抗せずにそのままにした。

 「名乗って貰わないと話が出来ない」

 「お、おう。渡辺や」

 「嘘は分かるぞ」

 「なんやて!」

 「だーかーら、嘘は分かるって。いい加減に放してくれ」

 「おう。放したっら!」

 ヤクザは僕の襟を手放した。僕は『げほげほ』と噎せた。

 ここは近鉄八尾駅から少し離れた場所のアーケードのある商店街の中だ。人通りは少ない。閉店した店のシャッターの前で折りたたみテントを改造した大きな化学繊維繊維で出来た箱を作り、『占い』の看板を出している。箱の中には小さなテーブルと椅子二脚が設置してある。それに雰囲気を出す為に、紫のランプで光る偽物の水晶球をテーブルの上に置いている。狭いし、至って簡素な設備だ。僕の服装も普通のカジュアルスーツだ。

 僕は椅子に座った。ヤクザも椅子に座った。歳は三十ぐらいだろうか。こんなやり方で凌いでいるとは思えない。有力な者の下働きをして暇つぶしに僕のような占いの店を襲撃しているのだろう、と思う。

 「名前は?」

 と僕はヤクザに訊いた。やっぱり三十歳には見える、と言う事は僕より五つ六つ年上だろう。

 「…楠田や」

 「クスノキに田んぼの楠田君、何の用かな?」

 「せやから『みかじめ料を出せ』ってちゅーとるんじゃ」

 「あ、言った?」

 「ん? 言うたわ」

 「言ってないよ。わはは」

 僕はゲラゲラ笑った。みかじめ料と言うのは興行の際に地元の暴力団に渡す金の事である。『渡さないと興行の際に暴れる』とか遠回しに言って来る。大抵の儲かってそうで警察沙汰にならなそうな興行で行われているらしい、とゴシップ誌に書いてあった。法治国家にあるまじき慣習だ。

 「おんどれー、ナメくさって!」

 「幾ら?」

 「十万や」

 「一ヶ月で?」

 「そうや。良心的やろ。へへ」

 「一ヵ月後に僕がここに居る保証は無いぞ」

 「う…。今日はお前の実家がどこにあるか確かめるんや」

 「実家は東京の世田谷区」

 「そこから通ってるわけないやろが」

 「まあね」

 「お前、馬鹿にしとったらエライ目に合わすぞ!」

 「みかじめ料より刑務所の方がいいのか?」

 「あ」

 楠田は少し困った顔をした。僕は笑いを堪えた。なかなか愉快な奴である。それに結構男前だ。大阪のおばちゃんに言わせると『シュッとしている』顔だ。

 「いつもは夜中までやっているんだけど、今日はもうダメだな。楠田君、一緒に部屋に来てくれ。そこでみかじめ料を払おう」

 「そ、そうか」

 僕は改造テントの中の物をバッグに詰めて、改造テントを畳んだ。

 「結構コンパクトなんやな」

 とヤクザ改め楠田がポケットに手を入れて言った。

 「ふふ」

 「なんや? なんかおかしいか?」

 「いや。楠田君は車か?」

 「ああ。そこに停めてあるヤツや」

 見ると、商店街の入り口に白のローレルがある。中古品を手入れしたものなのは一目で分かる。彼がドチンピラなのはすぐに分かった。

 「歩いて行こうか。一方通行が多いし、狭い道もあるから」

 と僕は楠田を見て言った。

 「近いんか?」

 「歩いて十分、昇って二十秒、かな?」

 「なんやその『昇って』って?」

 「来れば分かるよ、楠田君」

 「あのな、俺の方が年上やのに『君』はやめてくれへんか」

 楠田がドスの効いた声で言った。僕は構わずに自室に向かった。背後で『ちっ』と言う楠田の舌打ちする音が聞こえた。

 「僕は凪礼一。風が凪ぐ、のなぎに一礼の反対。分かる?」

 僕は後から付いて来る楠田に進行方向を向いたままで言った。

 「なぎ、凪…。あんまり聞いた事の無い名前やなあ」

 と楠田。

 「珍しい苗字だと名前の本にも出てた。あ、ほら、このビルに入るよ」

 「お、おう」

 僕は楠田を駅前の真新しい大きな貸しビルの中を案内して、ガラス張りのエレベーターに乗った。他に客が居ないのを確認して、階数表示ボタンの下にある鍵穴に長い鍵を入れて回した。『ピ』と音がした。



回路師

「回路師ってホンマにおんの!? 凄いやん!」と知人。

フィクションなんですけど。


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