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Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
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当ブログでは、私の発行済みの電子書籍を紹介をしております。また、楽しんで頂けるようエンターテインメントブログを目指しています。ごゆっくりお楽しみ下さい。

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T氏の話Vol・3

T氏の話Vol・3

【T氏の話Vol・3《ネコ缶》より本文抜粋】


 陶器製の大ジョッキにはビールが、そして大皿には山盛りのソーセージ。こんなの食べて異常な血液の成分になって血を入れ替えたんだっけ。今はもう大丈夫なのでゆっくり食べて飲む事にした。

 「相変わらずですね」

 とT氏。場所は店の隅の隔離されたスペースだ。ここでならどんな話も外に洩れる事が無い。人目も気にする必要が無い。T氏は盗聴器の有無も調査したそうである。

 「何がです?」

 私はソーセージを齧って言った。

 「元気そうで」

 「節制の賜物です。基本玄米食ですし」

 「猿の手の効果は続いていないと?」

 「あれって健康になる代わりに貧乏になったじゃないですか。貧乏脱出してから力が弱まったと考えてます」

 「なるほど、論理的ですね」

 「今夜はどんな話ですか?」

 「ネコ缶です」

 「はあ。ネコ缶。ネコの餌ですか」

 「いえ、中にネコが入ってます」

 とT氏。私は飲み掛けたビールを吐き出しそうになった。

 「缶の中にネコ入れたら死にますよ」

 「それがそうじゃないんですよ」

 「はあ」

 「一旦ネコを溶かして缶に詰めて蓋で密閉します。蓋を開けて空気に触れると元に戻ります」

 「へー」

 「信じてませんね」

 「そんなテレビドラマがあったような…」

 「これです」

 T氏は自分の鞄から缶詰を取り出した。大きさはホールトマトの缶詰ぐらいで、ぱっかんとクリップを上に引き上げると開くタイプだ。

 私はその缶詰を手に取ってよく見た。可愛い子猫の写真が付いていて、注意書きも貼ってある。

 「開けますよ」

 と私はネコ缶を開けようとした。

 「ダメです。これは試作品なんです」

 「危険なんですか?」

 「危険はないんですけど、持ち帰って開けて下さい」

 「理由は?」

 「ご自宅で開ければ分かります」

 「子猫の死体が入っているとか」

 「入ってませんよ、そんな気味の悪いもの」

 「ふーん」

 「どうします? 持って帰りますか? 止めますか?」

 とT氏は少しニヤリと笑って言った。このおっさんは私の好奇心の扱い方を熟知している。腹が立つけどネコ缶なる物の正体が無性に知りたくなった。

 「持って帰ります」

 と私。ああ、また負けた。負けてもいいけど負けた。

 「それでは」

 T氏は十個のネコ缶を私に差し出した。私はそれらをT氏が持って来いと言ったボストンバッグに入れた。結構重い。そして顔を上げたらT氏が居なかった。外を見るとT氏が走ってタクシーに乗り込むところだった。

 やられた。また奢らされた。本当にあのおっさんは悪趣味である。ちょっとしたスリルを楽しんでいるのだろうか。いい歳してもう。


 マンションの自室に戻った。午後十一時少し前なのでパソコンで個人用の日記を書いた。ブログになると書けない事だらけなのでやってない。そしてシャワーを浴びて寝た。

 翌朝は八時に目が覚めた。顔を洗って部屋着のジャージに着替える。そして昨日の事を思い出す。リビングのテーブルの上に普段持ち歩いている鞄とボストンバッグがある。紙袋の中身はネコ缶である。

 ネコ缶! そうだ、開けるとネコが出て来るネコ缶だ! 

 「ほんまかいな…」

 私は何故か関西弁で言った。うん。しっくり来る。来ている場合ではない。どうする?

 私はネコ缶を調べた。注意書きには『ペットは生き物です。一生面倒をみてやって下さい』とか、ネコの育て方が一通り書いてあった。

 「うーむ…」

 私は唸った。ドッキリカメラか? 日本では家宅侵入してまで一般人にカメラを向けるなんて事はしない。ではなんだ? 本当にネコが出て来るのか?

 確かT氏は『一旦ネコを溶かして入れた』と言っていたな…。嘘だー! 有り得ん。私は『スコティッシュ・フォールド 2ヶ月』と記され、耳の折れた子猫が映った写真が貼られた缶を開けた。

 缶の中には緑色の硬そうなゼリーのような物が詰まっていた。ほらみろ、嘘じゃないか。私は次々に缶を開けた。スコティッシュ・フォールドが後一つ、マンチカンが二つ、アメリカン・ショートヘアーも二つ、アビシニアンは三つ、ロシアンブルー、など色々な缶があった。みんな生後一、二ヶ月乃至三ヶ月の子猫だ。

 全部開けた。今回は騙された。と思った。暫くして、最初に空けた缶から泡が出て来た。そしてその泡は急速に大きくなり缶が倒れた。そして『にゃー』と言う声が聞こえた。

 「まさか…」

 私は最初に開けた缶から出た泡を手で掬った。泡の中に何か居る。泡を洗面所で落とす。すると子猫が現れた。

 「マジー!」

 と私は大きな声で言った。子猫が掌の上に居る。タオルで拭いてやる。床に置くとトコトコ歩く。

 あちこちで『にゃー、にゃー、にゃー』と子猫が鳴き始めた。見るとネコ缶から泡が出て、猫が泡から這い出して鳴いているのだ。

 「わあ…」

 私は呆然としてしまった。そして猫をよく調べた。作り物ではない。生きた本物の子猫だ。おしっこしているのもいる。どうすりゃいいんだ。私は暫し呆然と立ち尽くしていた。



T氏の話Vol・3

T氏の話Vol3には、

 『ネコ缶』

   『透明スプレー』

     『幽霊レンズ改』

       『いろいろな薬』

         『Dの血』


の五編を収録しております。



表紙の写真に使っているスーパーカブ110は私の愛車です。

もう10,000キロ走ってますけど、やっとエンジンにアタリが出て来ました。

どんだけ走んねん?


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