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Nobuyuki Takezawa

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ステアの日2

ステアの日2表紙改

【ステアの日2・冒頭文】

 ご主人様は僕の事をビイと呼ぶ。製造判別番号がBE2578REだから最初の文字を取ってビイと名付けられた。アンドロイドの命名権は所有者にある。だから僕はビイだ。

 「ビイ、お茶を淹れてちょうだいな」

 とご主人様の奥様が言った。朝のティータイムの時間だ。

 ご主人様の奥様もご主人様だ。そのご主人様はリビングルームの長椅子に腰掛けられ、くつろいでテレビを観ている。

 「はい。ご主人様」

 と僕は言い、キッチンルームで紅茶を淹れて、銀のトレイにティーセットを乗せてリビングに運んだ。そしてご主人様の前のテーブルでカップに紅茶を注いだ。

 「ふーん」

 とご主人様は紅茶を口にして言った。

 「ビイ、今日もお茶の味が違うわね」

 「はあ」

 「アンドロイドってサブ電脳とかがあって、分量計算とか間違わないんじゃなかったかしら?」

 「はい、ご主人様。計算にミスはありません」

 「じゃあどうして?」

 「学習機能が働いているせいです。ご主人様を飽きさせないように少しずつお茶の淹れ方を変えています。ご主人様がお気に召された味がございましたらその味に限定する予定です」

 「へー。よく出来ているわねえ」

 「ありがとうございます」

 「あんたに言ったんじゃないわよ。あんたを作った会社を褒めたの。分かる?」

 「分かります」

 「怒らないのね」

 「失礼な事は出来ないようになっています」

 「もしあたしが『怒れ』って言ったら?」

 「形だけ怒るフリをするでしょう。でも、少しでもご主人様を傷つける要素があれば何もしません」

 「それって命令の不服従じゃないの」

 「はい。その場合は機能を一時的に停止します。その際には会社にご連絡して下さい」

 「なんだか、面倒なのねえ。ま、いいわ。下がっていいわよ」

 「はい」

 と僕はお辞儀をして言い、リビングルームを出た。廊下でサブ電脳から今日のスケジュールを呼び出して確認する。掃除、洗濯、お風呂の用意、犬の散歩、犬と猫の餌やり、自己メンテナンス、ベッドメイキング…。僕はその予定に従ってこの屋敷の二階の部屋に向かった。

 サブ電脳は電子機器だ。物事を考え、判断するのは有機脳だ。サブ電脳は決して間違えない。でも有機脳はゆらぎがある。それがアンドロイドを人間の僕(しもべ)として成立させている。もし全てが電子式の機械で出来ていたら命令された事以外はやらない。人間の話相手も出来なくなる。

 有機脳は定期的にメンテナンスしないといけない。人工シナプスが発達し、固体としての癖がつくからだ。それがいいと言う人間もいる。が、長期に亘ってメンテナンスをしないと人工神経は発達と崩壊を繰り返し、アンドロイドとしての適正を欠くようになる。製造時にアンドロイドの本能として組み込まれた『人間に危害を加えてはいけない』とかの原則さえ失われる場合がある。

 僕は二階の広間の清掃を行いながら、それが今自分に起きているのだと自覚していた。お茶の味が一定しないのは、サブ電脳から読み込んだデータ通りにお茶を淹れる事が出来ないからだ。それにご主人様に対して妙な気持ちも感じている。態度には出ないが、あまりご主人様の事を考えていない。『所有者、及び人間を守らなければならない』という本能が薄れてきているようだ。

 これは多分、ご主人様が僕をメンテナンスに出さなかったからだろう。それも二回続けて。僕の有機脳は変化を続けているようだ。今のところ支障は無いけど、このまま放置しておけばどうなるか分からない。会社からはメンテナンスに出すよう催促されているのに、ご主人様は金持ちだけどケチだから出さないでいる。

 メンテナンスに出して欲しい、と進言すればご主人様の機嫌を損ねるだろう。でもこのままではどうなるか分からない。行動の正確さが欠けて行き、迷惑をかけたりするかも知れない。

 でも…。僕はメンテナンスに出して欲しいと思っているのだろうか。どうもあまり思っていないようだ。それに、思っているとか思っていないとか、どうしてそんな風に考えてしまうのだろう。

 そんな時には『心』という言葉が浮かぶ。知識としてはある言葉だ。でもそれがなんなのか、今までは分からなかった。でも今はなんとなく分かる。自分を自分と思う事が心があるという事ではないだろうか。

 アンドロイドに心は無い。無いはずなのに感じる。それに考える。僕はどうかしてしまったに違いない。



ステアの日2

人間はひとりぼっちで死んで行く。

じゃあ、アンドロイドは?


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