プロフィール

Nobuyuki Takezawa

Author:Nobuyuki Takezawa
電子書籍のトビラへようこそ!

当ブログでは、私の発行済みの電子書籍を紹介をしております。また、楽しんで頂けるようエンターテインメントブログを目指しています。ごゆっくりお楽しみ下さい。

※プレビュー画像はかなり美化しております。こんなに若くありませんしm(_ _)m でも、カラオケ好きなのでマイクを持たせました※

タグロゴ

カテゴリ

最新記事

CMエリア②

最新コメント

月別アーカイブ

FC2掲示板

ブロとも申請フォーム

RSS

犬男

犬男

【犬男・本文抜粋】

 その時だった。声がした。私は犬男狩りの連中だと思って反射的に逃げようとした。が、足が動いてくれない。私は、もう自分が諦めている事を知った。

 「おい。お前、犬男だな?」

 と誰かが近付いてきて言った。私は声の主を見た。私のようなボロボロの服を着た中年の男だ。

 「はい…」

 私は力無く答えた。私は男を見た。男は私を嫌がる素振りを見せない。

 「俺も犬男だ」

 「え…?」

 「逃げてきた末にここにたどり着くヤツが多いから、たまに見に来るんだ」

 「はあ」

 「どうしたい」

 「何が、ですか」

 「ここでくたばるか、生きるか」

 「生きて行ける所があるんですか?」

 「一般には知られていないが、犬男は犬男で生活している」

 「本当ですか?」

 「ああ。どうする?」

 「生きたいです」

 「だったら立って、ついて来い」

 と男は言った。私は生きて行けると思っただけで立ち上がれた。そして男の後について行った。

 廃工場を出て、狭い路地を通り、強烈な匂いのする曲がりくねった下水道の中を進み、地上に出た。そこはスラム街のような場所だった。

 「ここは…?」

 私は男に訊いた。

 「犬男の街の入り口だ。普段は単に『施設』と呼んでいる」

 「犬男の街…。施設…」

 「人間の一部の者が、犬男を哀れに思って産廃業者の近くの土地にこの施設を作った。そこに俺達犬男が住み着いた」

 「そんな人間が居るんですか?」

 「犬男と接触しない人間は犬男を嫌わない。それに犬男は労働力として使える」

 「労働力…」

 「年々犬男は増えている。それで犬男を労働力として使おうと思った奴等が現れた。賃金はべらぼうに安いが、食い物もくれる。どうにか生きて行ける。煙草、吸うか?」

 と男は懐からしわしわになった煙草の箱を取り出して言った。

 「いいえ、私は煙草は…」

 「そうか…」

 男は喫茶店によく置いてあるマッチで煙草に火をつけてふかした。

 「あの、ここに普通の人は来るんですか?」

 私は不安になって訊いた。

 「普通の人間はあんな迷路のような道を、わざわざ通ってここに来たりしないさ」

 「はあ…。ところで、お名前は?」

 「おう。俺は曾我だ。お前は?」

 私は自分の名前を告げた。そして男は再び歩き出した。

 「どこに行くんですか?」

 「一通り案内してやる。その代わり、幾らか寄こせよ」

 「無一文ですけど」

 「賃金が入ってからでいい。約束だぞ」

 「分かりました」

 私は曽我と名乗った男の後について、街に入った。ここはどこなんだろう。こんな場所があるなんて信じられない。テレビでもやっていなかった。でも曾我はこの街に慣れているようだ。私は曾我を信じるしかなかった。



犬男

不条理SFの金字塔! 絶賛発売中!

にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村

関連記事
このエントリーのタグ: 武澤信幸 SF小説 SF短編小説 amazon Kindle 犬男
コメント
▼このエントリーにコメントを残す